毎年、波乱の展開となる岡山国際サーキットでの全日本スーパーフォーミュラ選手権。今年もスタートのやり直しや序盤のセーフティーカー導入などがあり、荒れ模様の始まりとなった。その後はタイヤ交換のタイミングによって、目には見えない神経戦が展開されたが、結局最後に勝利の美酒を味わったのは、予選Q3でのクラッシュから復活した坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)。昨年、富士で2位表彰台に上がったのがこれまでの最高位だった坪井が、いよいよ歓喜の初優勝を果たした。
2位にはチームメイトの石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)。タイヤ交換直後に坪井の追撃を許した石浦は、岡山での3勝目を挙げることができなかった。3位にはニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)。予選ではQ2で敗退したキャシディが、スタートと作戦で大きくポジションを上げ、ディフェンディングチャンピオンの底力を見せた。気温24℃、路面温度33℃というコンディションのもと、フォーメーションラップがスタートしたのは午後3時15分。このフォーメーションラップには19台のうち18台が出走。笹原右京(TEAM MUGEN)はスタート進行中に行われる8分間のウォームアップ走行最後にギヤボックスの電気系トラブルが発生。その修復に時間がかかり、ピットスタートとなった。またフォーメーションラップがスタートし、各車が1周の隊列走行に入ると、ここでも波乱が発生。今回、山下健太の代役として出走した阪口晴南(KONDO RACING)が、タイヤを温めている中バランスを崩して、アトウッドコーナーでクラッシュ。この影響で赤旗が提示され、フォーメーションラップは仕切り直しとなった。2回目のフォーメーションラップがスタートしたのは、午後3時30分。やり直しとなったため、レースの周回は1周減算され、50周で争われることとなった。17台のマシンが1周の隊列走行を終えると、全車が正規のグリッドに着く。後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルのレッドが一つずつ点灯し、オールレッドからブラックアウト。ここでいい動き出しを見せたのはPPスタートの平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。今回中嶋一貴の代役として出場し、これがデビュー戦となるフロントロウの宮田莉朋(VANTELN TEAM TOM’S)は、初めてのハンドクラッチによるスタートだったこともあり、動き出しが鈍る。その結果、2番手集団は一気に横に広がる形となり、予選4番手の牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)がイン側から宮田の前に、アウト側からは予選3番手のサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が宮田の前に出る。その後方で、やはりイン側から宮田の前に出てきたのが予選5番手の大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)だったが、大湯は1コーナーへのアプローチでブレーキをロック。すぐ前にいたチームメイト・牧野と、その真横にいたフェネストラズの右リヤに接触してしまう。この接触でフェネストラズはスピンしてグラベルに飛び出し、そのままレースを終えた。好スタートを見せた牧野もそのままスピンして、コース上にストップ。リタイヤとなる。これでコース上にはセーフティーカーが導入された。この時のオーダーは、トップが平川。スタートで最もイン側のラインを通って、アクシデントの影響を受けなかった坪井が2番手、同じラインをすり抜けた石浦が3番手、キャシディが4番手まで浮上する。以下、スタート直後に一番アウト側から前に出ようとしていた山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、予選Q1敗退から9つポジションを上げた関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、宮田、野尻智紀(TEAM MUGEN)と続いている。アクシデントのきっかけを作った大湯は自身もグラベルに飛び出して最下位まで沈んでいたが、フロントウィングにダメージを抱えており、2周目を終えた所でピットイン。フロントノーズを交換してコースに戻った。フェネストラズと牧野のマシン回収のため、セーフティーカーランは数周に渡って続いたが、7周を終えたところからレースは再スタート。コース前半で大きく減速してセーフティーカーに対するマージンを作っていた平川は、パイパーコーナーから加速を開始し、容易に首位をキープする。その後方では、坪井と石浦のチームメイト対決。石浦がオーバーテイクシステムを作動させながら、ヘアピンで坪井攻略を試みた。追われる坪井はブレーキをロックさせながらも、石浦の攻撃から身を守ってみせた。さらに一旦オーバーテイクシステムを作動させ、しばらく使用できない状態の石浦には、山本が迫る。9周目のバックストレートでオーバーテイクシステムを作動させた山本はヘアピンからパイパーコーナーにかけて、石浦の前に出ようと攻撃を仕掛けたが、ここは石浦も必死の抵抗を見せ、ポジションを守った。この頃になると、ピットでは早くも動きが出始める。今回のレースではタイヤ交換義務が課せられているが、ピットストップはトップが10周目の第1セーフティーカーラインを超えたところからファイナルラップまでとなる。そこで早めにタイヤ交換を行うドライバーと、引っ張れるだけ引っ張ってから終盤にタイヤ交換を行うドライバーに分かれた。そして、10周を終えようかという所で真っ先にピットに入ったのが、5番手を走行中だった山本と、7番手を走行中だった宮田。最下位まで後退していた大湯もピットに入った。その翌周には2番手を走行中だった坪井、関口、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がピットに入った。さらに、12周を終えようかという所でトップを走っていた平川もピットイン。リヤジャッキが上がらないという問題はあったものの、坪井の前でコースに戻ることには成功した。しかし、すでにタイヤが温まっていた坪井は、最終コーナーあたりからオーバーテイクシステムを作動させると1コーナーではブレッキをロックさせながらもピットを出てきた平川に急接近。対する平川はインラップでギャップを築くために一旦オーバーテイクシステムを使っており、その時点ではまだ作動させられない状況だった。平川はようやくバックストレートに入るあたりから再びシステムを作動させるが、ずっとシステムを作動させ続けていた坪井の方が勢いは上。バックストレートで並びかけると、坪井はヘアピンでアウトから平川の前に出ることに成功し、事実上のトップに躍り出た。この時、見た目上の順位は、石浦、キャシディ、野尻智紀(TEAM MUGEN)、中山雄一(carrozzeria Team KCMG)、大嶋和也(ROOKIE Racing)、大嶋和也(ROOKIE Racing)、塚越広大(ThreeBond Drago CORSE)。この中で14周を終えようかという所で中山、15周を終えようかという所で塚越、19周を終えようかという所で野尻と大嶋がピットイン。石...
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