FIAは2025年F1シンガポールGPにおいて、戦略的なバリエーションを増やす試みとして、ピットレーンの速度制限を引き上げることを決定した。マリーナベイ・サーキットのピットレーンは周囲が非常に狭いため、通常の100km/h制限は60km/hに引き下げられており、チームスタッフがクルマに接触したり、衝突時に飛散する破片に当たったりするのを防ぐ措置が取られてきた。
このためドライバーはピットレーンで長い時間を費やすことになり、チームは複数回のストップによってレースタイムやトラックポジションを失うことを嫌がり、オーバーテイクが難しいサーキットの特性も相まって、レースはドライコンディション下ではワンストップに固定化されていた。しかしこれに対抗するため、最低ピットレーン速度制限は過去の60km/h(時速37.2マイル)から80km/h(時速49.7マイル)へと引き上げられることになった。ピットレーン速度制限の引き上げは、戦略的にレースを活性化させることを狙ったF1首脳陣の議論の一因であり、ここ最近、戦略的な変化に乏しいワンストップのグランプリが増えている状況を受けて導入されたものだ。ピレリは今回、C3・C4・C5をハード・ミディアム・ソフトとして投入する。新しい最軟コンパウンドであるC6は、もうひとつの市街地サーキットである前戦アゼルバイジャンGPで使用されたものの、今回は採用されていない。