佐藤琢磨が、インディカー最終戦ソノマのレース週末、そして2015シーズンを振り返った。2015年ベライゾン・インディカー・シリーズの最終戦が開催されたソノマでは、多くの人々がジャスティン・ウィルソンの死を悼んだ。誰からも愛されていたイギリス人ドライバーは、この前の週にポコノで行われたレース中に負傷し、帰らぬ人となった。
一方、No.14 AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダに乗る佐藤琢磨は、18番グリッドからスタートして8位でフィニッシュするというスリリングな戦いを演じていた。「ジャスティンの悲報を聞いて、まだ数日しか経っていませんでした」と佐藤琢磨。「このことで僕たちはとてもショックを受けていたし、ジャスティンの家族のために何かをしたいと思っていました。安全面に関していえば、今後も改善していかなければいけないのはもちろんですが、これはオープン・コクピットのレーシングカーでは常に問題になることです。僕たちはこれまでに様々な分野で安全性を向上させてきましたが、舞い上がった破片の問題を解決するのは容易ではありません」「ジャスティンの逝去は僕たちにとってとても大きなことで、個人的にも大切な友人を失うことになりました。彼は誰からも愛されていて、本当に素晴らしい人物でした。ウィルソンの遺族は、No.25 アンドレッティ・オートスポーツのマシーンをソノマで操るドライバーとしてオリオール・セルヴィアを選びました。彼もまた僕のよき友人で、2010年に僕がKVレーシングで走っていたとき、オーバルレーシングでは彼が僕のスーパーバイザー役を務めてくれました。オリオールがジャスティンのマシーンに乗って参戦することは、遺族にとって素晴らしい贈り物になったと思います。そして、僕たちが演じることになるエキサイティングなレースこそ、ジャスティンがいちばん期待していたものだったはずです!」この週末に行われたプラクティスやクォリファイで佐藤琢磨が上位に名を連ねることはなかったが、金曜日に行われたセッションの序盤では抜群の速さを示していた。「コンディションがめまぐるしく変化するので、ソノマは本当に難しいコースです。風向き、コースが砂地に囲まれていること、グリップの低い路面、丘、そしてそれらが組み合わさった結果、スイートスポットが恐ろしいくらい狭くなっているのだと思います」「いまはシーズン中のテストが禁止されていますが、かつてはレースの1〜2週間前にオープンテストが行われていました。今回の金曜日はプロモーターズ・デイと呼ばれていて、3.5時間という長い走行時間が用意されています。けれども、規模の大きな一部のチームは、リーグのスカラシップ・プログラムであるインディ・ライツのドライバーを起用し、現行の空力パッケージを用いたテストを事前に行っていました」「セッションの序盤、僕たちは順調で、一時は2番手につけていたほか、長い時間にわたってトップ3かトップ4に入っていました。ところが、コンディションがよくなると、他のドライバーたちが速くなっていきます。もちろん、僕たちも速くなりましたが、他のチームに比べるとそれほどでもなく、このためタイムシート上の順位は少しずつ後退していく結果になりました」「土曜日には45分間のセッションが設定されていました。オーバーテイクが難しいソノマではスターティンググリッドが非常に重要なので、僕たちはありとあらゆることを試しました。ここではまずまずの進歩を果たすことができましたが、残念ながら、それは誰にとっても同じことでした!」予選では、わずかコンマ数秒差でセグメント2進出のチャンスを逃し、佐藤琢磨は18番グリッドからスタートを切ることとなった。「チームメイトのジャック・ホークスワースがエンジン・トラブルに見舞われました。彼に責任があったわけではありませんが、不運にも、僕は彼の直後につけており、装着したばかりのニュータイアの表面には水やオイルがついてしまいました。しかも、コンパウンドはとてもソフトなため、実質的なライフは1周しかありません。やむなく、僕は走行を続けましたが、アタックを始めた直後はこの影響でタイムをロスしていたので、続けてもう1周走ることにしました。ところが、ステファノ・コレッティがピットから目の前でコースインしてきたため、ここでもまたタイムを失うこととなったのです」土曜日の午前中に行われたウォーミングアップで佐藤琢磨は好走を見せ、ウィル・パワーに続く2番手につけた。これで、佐藤琢磨の決勝レースでの活躍がより期待されることとなる。2014年のここソノマでも、後方のグリッドからスタートした佐藤琢磨は4位でフィニッシュしていた。けれども、それだけたくさんのマシーンをソノマで追い越すのは不可能に近く、18番グリッドから挽回を図るには、レース序盤に通常とは異なるレース戦略を採る以外に方法がないことは明らかだった。「去年、普通とは異なる戦略で走ることがラップタイムと順位を向上させるうえで有効であることに気づきました。このおかげで僕たちは挽回できたのです。そこで今回も第1スティントを短めにしましたが、これ以降は、良い展開に恵まれず、ステイアウトすることでトラックポジションを上げることを選んだ結果、リスタートして6周で僕たちはピットストップする必要に迫られます。しかも、後方を走るほとんどのドライバーも同じ戦略を選択したのです」ここから先は戦略が大きな鍵を握るレースとなった。フルコーションが4度ということは、早めにピットストップした者にとって有利になることもあれば、長くコース上を走り続けた者が得をすることもある。さらには、他のドライバーと異なる回数のピットストップを行うという手法も考えられる。「僕はパワー、ファン-パブロ・モントーヤ、ディキシー(スコット・ディクソン)らとサイド・バイ・サイドのバトルを演じていました。楽しいレースでしたが、チャンピオン争いをしているドライバーに対しては特別な注意を払いました。とてもハードな戦いでしたが、僕たちは全力で挑みました」最後のピットストップをどちらかといえば遅めに行った佐藤琢磨は21番手につけていたが、彼の前を走る多くのドライバーはもう1度、給油を行う必要があった。彼らの一部は、ジェイムズ・ジェイクスがクラッシュしてフルコーションとなったときにピットストップを実施。レースがリスタートしたとき、佐藤琢磨は12番手となっていた。けれども、この状態は長く続かず、...
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