佐藤琢磨が、インディカー 第13戦 アイオワのレース週末を振り返った。前戦が終わってまだ6日しか経っていないというのに、ベライゾン・インディカー・シリーズの一行はミルウォーキーよりもさらに全長が短いアイオワ・スピードウェイを訪れたが、佐藤琢磨にとって残念な結果に終わったことには変わりなかった。
佐藤琢磨はラップダウンの14番手を走行中に、No.14AJフォイト・ダラーラ・ホンダの右フロント・サスペンションが破損したため、ターン2のウォールに激突。佐藤琢磨が無傷だったことは幸運以外の何ものでもなかった。チームがアイオワに持ち込んだショートオーバル用のセットアップは、ロードコースで使われているものと非常に近い内容だったが、状況はまったく異なっていた。「率直にいって、誰にとっても非常に大変な週末でした」と佐藤琢磨。「ミルウォーキーはほとんどバンクがありませんが、アイオワはハイバンクのコースで、しかもナイトレースとなります。ところが、プラクティスはすべて日中に行われました。ナイトレースのときは夜間のプラクティス・セッションが設けられるのが通常です。したがって、冬の間にアイオワでテストしたほんの数チームだけが、新しいエアロパッケージの開発を行える可能性があったことになります。たしかに、テストは昼の間に行われましたが、気温はずっと低いので、いくつかのことをシミュレーションできたはずです」「僕たちのプラクティスはあまりスムーズに進んだとはいえません。45分のセッションが2回だけでは、決して十分ではありません。走り出しの段階では、マシーンのセットアップは完璧とは言いがたい状態だったので、最初のセッションではまずセットアップの煮つめを行い、ようやく安心してドライブできるレベルに近づきました。そこで、プラクティス2ではセットアップをさらに改善するため、いくつかの実験を行いましたが、それらは残念ながら反対の結果に終わりました。エアロの点でもメカニカルグリップの点でも、僕のマシーンは最適化されたことが一度もないまま、セッションは時間切れとなったのです」このような状態だったから、予選での15番手という結果は決して悪くなかったといえる。「あらかじめ、そこそこにはいい結果が得られるであろうことがわかっているセットアップで予選に臨みました。今季は、僕が先に予選アタックに挑み、この結果を踏まえてチームメイトのジャック・ホークスワースが予選に臨むという形で進んできましたが、今回はジャックが4番手、僕は21番手の出走で、アタックを終えたジャックは、アンダーステアがひどく、またダウンフォースが大きすぎると訴えていました。僕たちはもともと彼よりも軽めのダウンフォースでセッティングしていましたが、ジャックのコメントを受けてさらにウィングを寝かせることにしました。結果的にプラクティスよりは速くなりましたが、スピードは満足できるレベルに達していなかったし、ギアリングも合わせ込むことができませんでした」「少なくとも、僕はラップタイムよりバランスのほうが満足できました。これでようやく、『レースに向けて少しいい状態になってきた』という、多少なりともポジティブな感触が掴めたのです。なぜなら、シャシーのメカニカルな部分に関しては、少しはよくなったことを証明できたのですから……」レースまでに夜のセッションに向けて最適化した新しいエアロパッケージを準備する時間は、ほんのわずかしか与えられなかった。たしかに今シーズン前半に行われたテキサスはナイトレースだったが、あれはスーパースピードウェイでの開催だったのでまた異なるパッケージが用いられた。夜間は、気温が下がるためにダウンフォースは増え、路面温度も低下するのでタイアのグリップレベルも同様に上がる。しかし、どれほど良くなるかを予想するのはとても難しかった。「新しいエアロパッケージのおかげでダウンフォース・レベルは大きく向上しました。けれども、出走したドライバーのなかでいうと、僕は比較的軽めのダウンフォースだったようです。ダウンフォースが大きく不足していることに気づいたのはスタートしてからのことでした。このときは午後7時50分で日没前でしたが、気温は下がり始めていてもまだ華氏80度(約27℃)あり、路面温度は華氏100度(約38℃)でした。しかも、スティントごとに温度は下がっていき、バランスも大幅に変化していきました。もちろん、チームは空気圧を変えて補正しようとしましたが、マシーンは非常にセンシティブな状態でした」レースの大半を通じて、佐藤琢磨はリードラップの後方集団か、ときにはラップダウンになりながら周回を重ねていたが、周回遅れになった際には、コーションになってトップがピットインしてもコース上にステイアウトするなどの戦略でリードラップへの返り咲きを図っていた。いずれにせよ、クルマを良い状態にまとめあげるには時間がかかった。「最初のスティントでは空気圧が高すぎ、コースのどこでもタイアがスライドするような状態でした。空気圧を少し下げた第2スティントはいい感触でしたが、第3スティントは少し欲をかいて空気圧を下げすぎ、スタビリティが失われてしまいました。第4スティントは空気圧を戻したところ最初のスティントと同じような状態となり、第5スティントで最終的に問題を解決できました。これでようやくバランスのいいマシーンに仕上がったのですが、ここまでに250ラップ近くを費やしていました」ある周回では、ホークスワースがトップで佐藤琢磨が2番手となり、AJフォイト・レーシングの1-2体制ができあがったが、その直後に佐藤琢磨は最後のピットストップを行うこととなった。そして261周目に悪夢のような出来事が起きる。「とてもエキサイティングで、いかにもアイオワらしいレースでした。接戦の連続で、僕は前に行ったり後ろに行ったり、ショートオーバルらしい忙しい戦いでしたが、最後のスティントはとてもいいペースで周回でき、目の前のグループに追いついていきました。ターン2のいちばんバンピーなところにやってきたとき、右フロントのプッシュロッドが壊れ、マシーンが激しくボトミングしました。僕にはどうすることもできませんでした」「2011年のテキサス以降、これほど嫌な気分を味わったことはありません。とてもアグレッシブなラインで必死にコーナリングしている最中に、なんの予兆もアクシデントはなく起きました。ラップタイムは18...
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