グランツーリスモは、レッドブル・レーシングとのプロジェクト「X1プロトタイプ」の全貌を公開した。こんにち存在するレースには、必ず何らかの規則、つまりレギュレーションがある。X1プロトタイプはこのレギュレーションから開放された“地上最速のレーシングカーとはどんなものか”というグランツーリスモのファンタジックな夢から生まれたマシン。
当初のX1プロトタイプは、フロントホイールまでを覆ったウイング構造のシングルシーターキャノピー・プロトタイプだった。1500psのV6直噴ツインターボがもたらすパフォーマンスは、時速400kmオーバー、最大横加速度6Gという充分なもの。しかしこの構想は、プロジェクトのパートナーとなったレッドブル・レーシングによって、さらなる飛躍をみせることになった。レッドブル・レーシングのチーフテクニカルオフィサーであり、エアロダイナミクスの鬼才といわれるエイドリアン・ニューウェイは、X1プロトタイプに、自らが長年抱いてきた夢、「ファンカー」テクノロジーを採用することを提案している。ファンカーとは、マシン下部の空気をファンによって強制的に吸い出し、アンダーフロアの空気圧を下げることで路面に吸着させ、強力なダウンフォースを与える仕組み。速度と関係なく一定のダウンフォースを発生させることができるため、低速コーナーのコーナリングスピードを劇的に向上させることができる。ファンカーの猛威は歴史が証明している。1970年のCan-Nam(カンナム)に投入された、シャパラル2Jというファンカーは、あまりの戦闘力の高さから1シーズンで出場禁止に。F1でも、1978年にブラバムがBT46Bというファンカーを投入し、圧倒的な速さで開幕戦を制したため、たった1戦で参戦が封印されている。エイドリアン・ニューウェイの提案を受けたX1プロトタイプは、ボディ後端に大きなファンを抱えるマシンとなった。さらにニューウェイから前後ウイング、リアデフューザーの形状に助言を得て、そのエアロダイナミクスはさらに研ぎ澄まされたものへ進化した。この結果、X1プロトタイプが勝ち得たパフォーマンスは、最高時速450km/h以上、最大横加速度8.75G。生身の人間が耐えられる限界ともいうべき性能となっている。『グランツーリスモ5』の中で、マシンのシェイクダウンを担当したのは、あのセバスチャン・ベッテル。ベッテルは鈴鹿サーキットを舞台とした最初の走行で、F1マシンが持つコースレコードを20秒以上短縮。さらにニュルブルクリンク・グランプリコースでのテストでは、1分4秒台というラップタイムを刻み、X1プロトタイプのすさまじいポテンシャルを引き出してみせた。エイドリアン・ニューウェイ (レッドブル・レーシング チーフテクニカルオフィサー)「レッドブルX1」は実用技術の最適な組み合わせが一つのデザインの中で統合した、まさに進化そのものと言える存在です。その結果は非常にスリリングでした。「レッドブルX1」はレギュレーションに縛られないレースの未来であると同時に、実現可能な現実でもあります。その破壊的なまでの速度とコントロール性能はセバスチャン・ベッテルによって証明されています。PS3と『グランツーリスモ5』によって、私たちは未来をテストドライブすることができるのです。山内一典 (「グランツーリスモ」シリーズプロデューサー)このプロジェクトで目指したのはテクノロジーと美意識の限界を探ることです。エイドリアン・ニューイとのセッションはリアルとバーチャルの素敵な出会いでした。プロジェクトは両者の好奇心と情熱によって駆動され、最終的に高いレベルでカーデザイン、物理シミュレーション、レースカー製作技術、ドライビングを集結させることができたと思います。 関連:グランツーリスモ5、発売延期を発表