欧州委員会(European Commission)が、レッドブルによる競争制限の疑いで正式に反トラスト調査を開始した。対象となるのはエナジードリンク市場での同社のビジネス慣行で、EUは「競争を不当に制限した可能性」を指摘している。本件はF1とは直接関係しないが、レッドブルはF1界最大級のスポンサーかつオーナー企業であり、同社の動向はモータースポーツ界にも間接的な影響を及ぼす可能性がある。
欧州委員会が調査開始:250ml超の製品を巡る競争制限を疑う欧州委員会は、レッドブルがエナジードリンク市場において競争を阻害した可能性があるとして反トラスト調査を開始した。EU当局は、同社がヨーロッパ全域で250mlを超える製品を販売する競合他社に対し、競争を制限する戦略を展開していた疑いを持っていると述べている。特にオランダ市場での事例が焦点になっており、規制当局は近年の市場慣行を詳細に調査する方針だ。過去には、2023年にライバル企業であるモンスターエナジー(Monster Energy)の申し立てを受け、EU当局がレッドブルに対して査察を実施。レッドブルは「過剰な措置」として欧州司法裁判所に異議申し立てを行ったが、却下されていた。欧州委員会の競争担当コミッショナー、テレサ・リベラ氏は次のようにコメントした。「これらの慣行が、エナジードリンク市場において価格の高止まりや消費者の選択肢の制限につながっていないかを確認したい。この調査は、食品供給チェーンにおける競争ルールの執行を強化し、欧州の消費者に利益をもたらすための取り組みの一環だ」EUの規制に違反したと認定された場合、レッドブルは年間売上高の最大10%の罰金を科される可能性がある。F1界への影響は? レッドブル・レーシングへの直接的影響は限定的今回の調査対象はあくまでレッドブル社のエナジードリンク事業であり、F1チーム(レッドブル・レーシング/レーシングブルズ)が直接捜査対象となっているわけではない。しかし、親会社のブランド価値・財務面が揺らぐ可能性はゼロではなく、F1活動への資金面・イメージ面の影響を注視する必要がある。■ 想定される影響・巨額の罰金が科された場合、企業全体の財務バランスに影響・F1スポンサーとしてのブランドイメージ低下の懸念・FIAやF1のマーケティング領域にも波及する可能性・ただしチーム運営に直結するリスクは現時点では小さいレッドブルはF1チームを年間数億ユーロ規模で支えているため、親会社の事業に調査リスクが生じることは、間接的な不確実性として受け止められている。エナジードリンク市場での競争激化とレッドブルの立場今回の調査は、エナジードリンク市場での競争が激化している背景も大きい。「250ml」というレッドブル独自の“標準サイズ”を巡り、「大容量を売る他社を阻害したのではないか」という疑いが出ている。競争法の焦点となるポイントは以下の通り。■ EU当局が注目する点・レッドブルによる販売慣行が競争を排除していたか・小売・流通網で不当な契約が存在したか・消費者選択肢の縮小や価格高止まりが生じたか・2023年の査察で得られた情報との整合性今後、欧州委員会は複数ステップで詳細な調査を実施し、レッドブル側の弁明も正式に求める見通しだ。まとめ:F1とは直接関係しないが、レッドブルの企業イメージに影響も今回のEU調査はレッドブルの中核ビジネスであるエナジードリンク事業を対象としたものだが、親会社のブランドイメージにかかる問題である以上、F1界も無関係ではない。現時点ではレッドブル・レーシングやレーシングブルズへの直接的な影響は限定的だが、今後、罰金リスクやブランド評価の変動がF1活動に影響する可能性はあるため、モータースポーツ関係者は慎重に見守る必要がある。