レッドブル・ホンダF1は、2021年F1第8戦シュタイアーマルクGPの決勝でポールポジションからスタートしたマックス・フェルスタッペンが非の打ちどころのないレースで2連勝を挙げてドライバーズ選手権のリードを広げた。メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ヴォルフが自らのマシンを“2番目”と断言するほど、レッドブル・リンクでのRB16Bは速かった。ロードラッグ、ローダウンフォースの高速仕様の空力構成は、暖かい気温とも相まってタイヤとのマッチングも良かった。
ルイス・ハミルトンがバイブレーションに苦しんだレースで、マックス・フェルスタッペンは「最後はまだタイヤが残っているように感じた」というほど、ストレスなく勝てるマシンだった。また、メルセデスがERSの電力が切れる“ディレーティング(レッドブルはクリッピングと呼ぶ)”に苦しんでいたのに対し、ホンダのF1エンジンのセッティングもばっちりだった。マックス・フェルスタッペンがブレーキ・バイ・ワイヤに不調を訴える以外(ラップタイムには影響しなかった)はまさに“完璧”な勝利だった。したがって、今回のレースはチームメイトのセルジオ・ペレスに目を向けるべきかもしれない。今回のレースではダブル表彰台のチャンスを逃すことになってしまった。レースペースは折り紙付きのセルジオ・ペレスだが、レッドブル・ホンダF1のマシンに慣れてきているとは言え、1発の速さはまだ弱点。それもあってか、レッドブル・ホンダはペレスに予選Q2をソフトで突破されることを決定。バルテリ・ボッタスの3グリッド降格が決定したため、少なくとも4番手で良かった予選だが、Q3で“伏兵”ランド・ノリスに上回られて5番手。そして、レース序盤10周はノリスを抜けずにトップ2との差を10秒以上離されてしまい、タイヤもうまくマネージすることができなかった。「ソフトタイヤが思ったよりもよくなくて、最初のスティントの終盤にかけてそれが痛手となった」とセルジオ・ペレスは振り返る。タイヤマネジメントに定評のあるセルジオ・ペレスだったが、ソフトタイヤは26周しか持たせることができずピットイン。そして、ここでレッドブル・レーシングとしては珍しく左リアタイヤの交換に手間取って4.8秒もかけてしまう。後から入ったフェルスタッペンは2秒だった。このタイムロスをメルセデスは見逃さずにバルテリ・ボッタスをピットに入れ、先行を許してしまう。そこからボッタスとの差をDRS圏内に入れるまで縮められなかったことで、ミディアムタイヤに交換して、ボッタスを追撃する戦略へと切り替える。残り17周でその差は20秒以上。2秒以上速いペースで追いかける。トラフィックをかき分けてなんとかその差を縮めたセルジオ・ペレスだったが、バルテリ・ボッタスに0.5秒届かず4位でチェッカー。コンストラクターズ争いでは3ポイントのロスとなった。序盤に予選でランド・ノリスに前に出れたこと、序盤にランド・ノリスをすぐに攻略できなかったこと、ソフトタイヤのマネジメント、ピット作業のミス、1周遅い2ストップへの切り替えと5つの要素が絡み合っての4位。マックス・フェルスタッペン仕様のマシンでセルジオ・ペレスが予選、そして、決勝でのスプリントでいかに1発の速さを身に着けられるかが、今後のメルセデスとの戦いの鍵を握るかもしれない。