レッドブル・ホンダF1にとってF1スペインGPの決勝は総合力を問われるレースとなった。メルセデスF1が2ストップ戦略を想定してミディアムタイヤを1セット残していた段階で勝負は決していたかもしれない。ポールポジションをルイス・ハミルトンに持っていかれ、セルジオ・ペレスが8番手に沈んだ段階で、レッドブル・ホンダには1ストップでマックス・フェルスタッペンがスタートで先行して逃げ切るというシナリオしかなくなった。
そして、スタートではマックス・フェルスタッペンはグリッドのいい偶数列から好スタートを決めてリードを奪った。抜きにくいカタルニア・サーキットではトラックポジションが重要であり、レース前の予想では1ストップが可能との見方もあったことから、2ストップの可能性を考慮しながらレースを進める展開となった。実際、レース序盤はDRSを使って20km以上速いスピードでもハミルトンがフェルスタッペンを抜きあぐんでいた。だが、メルセデスの分析はさらに先を行っていた。おそらくスタートで前に出られることもシナリオも考慮されていたのだと思う。トップのマックス・フェルスタッペンと3番手のバルテリ・ボッタスとの差が17秒とレッドブル・ホンダに身動きが取れない42周目にルイス・ハミルトンが2回目のピットストップを実施。残り24周で22秒差。1周あたり1秒ずつ縮めていけば最終ラップで抜ける計算だ。この戦略が実現したのはメルセデスがミディアムを1セット残し、レッドブルには残っていなかったことで実現した。土曜日のFP3でレッドブルはミディアムでロングランを実施して使い切ったが、メルセデスはソフトで実施。予選のQ1の1回目のアタックでミディアムを使って6周オールドの中古として残した。Q1の1回目をミディアムで走った理由はその時点では分からなかったが、すべては分析によるものだったということだ。ということは、金曜日のフリープラクティスを終えた段階でメルセデスはソフト-ミディアム-ミディアムの2ストップというシナリオを重要視していたことになる。戦略を抜きにしてもメルセデスはレースペースでレッドブル・ホンダを上回っていた。マックス・フェルスタッペンが24周目にピットストップするまでにその差は1秒以内に迫られていた。前にバックマーカーがいたこともあるが、マックス・フェルスタッペンは自らの判断でピットインを行った。対するルイス・ハミルトンは28周目にピットイン。その差は5秒あったが35周目までには1秒以内まで縮めていた。ミディアムでのスピードは1周あたり0.5秒と圧倒的にルイス・ハミルトンの方が速かった。そして、42周目に2回目のルイス・ハミルトンがピットストップした時点で勝負はついていた。そこからハミルトンは1秒以上速いスピードで差を縮め、残り7周でトップを奪い返すことに成功した。ポイントはやはりミディアムタイヤだ。ソフトでの最速タイムがタイムシートに並ぶプラクティスでは気づきにくいが、メルセデスはしっかりとミディアムタイヤでのセットアップを仕上げ、さらに1セット残すという戦略をとっていたのだ。そして、バックマーカーがいて、残り24周22秒という状況でそのシナリオを完璧に実行するルイス・ハミルトンのドライビングも見事だった。もし、セルジオ・ペレスがトップ4でバルテリ・ボッタスとバトルをしていれば、状況は違っていたかもしれない。ルイス・ハミルトンが2回目のピットストップを実施するにはリスクが大きかったからだ。もちろん、ハミルトンのタイヤマネジメントは秀逸ではあるが、同じタイヤで最後まで戦っていれば、もしかしたら、フェルスタッペンが防ぎきれた可能性もなくはない。シナリオの想定、タイミングの分析、2人のドライバーが果たす役割など、メルセデスとレッドブルの総合力の差が浮き彫りになったグランプリと言える。2021年 F1スペインGP 決勝 結果1.ルイス・ハミルトン(メルセデス)2.マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)3.バルテリ・ボッタス(メルセデス)4.シャルル・ルクレール(フェラーリ)5.セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)6.ダニエル・リカルド(マクラーレン)7.カルロス・サインツ(フェラーリ)8.ランド・ノリス(マクラーレン)9.エステバン・オコン(アルピーヌ)10.ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)11.ランス・ストロール(アストンマーティン)12.キミ・ライコネン(アルファロメオ)13.セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)14.ジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)15.アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)16.ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)17.フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)18.ミック・シューマッハ(ハース)19.ニキータ・マゼピン(ハース)DNF.角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
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