近年、スーパーフォーミュラはF1登竜門のひとつとなっている。外国人ドライバーとして日本のトップカテゴリーを戦う実情をピエール・ガスリーとニック・ニック・キャシディが語った。20,000rpm超で咆哮する世界屈指の高性能レーシングエンジンから、鈴鹿やツインリンクもてぎをはじめとするアイコニックなサーキットでの名勝負まで、日本にはモータースポーツが根付いている。
そして、この国独自の最高峰カテゴリーとして用意されているのが、スーパーフォーミュラだ。しかし、外国人ドライバーの立場でスーパーフォーミュラをはじめとする日本の選手権に適応していくのは他に類のないユニークなチャレンジになる。2019シーズンのスーパーフォーミュラ王者ニック・ニック・キャシディとスクーデリア・アルファタウリのF1ドライバー、ピエール・ガスリーは共にスーパーフォーミュラを知り尽くしたドライバーだ。今回はこの2人が日本のトップカテゴリーで頂点に立つための条件を語った。日本での生活「僕の中では最大の違いは日本のルールだ。日本のレースで重視されていることを理解するのが難しかった」とニック・キャシディは切り出し、さらに続ける。「ヨーロッパほどルールが明確ではないように感じる。だから、注意しておかなければならないことがいくつかあるよね」ピエール・ガスリーは言語の壁が最大の問題だったとし、次のように語る。「日本語の理解に一番手を焼いたよ」ニック・キャシディもピエール・ガスリーの意見に頷き、次のように語る。「効率的な意思疎通ができるようになるまでに少し時間がかかるのは確かだ。幸いなことに僕は日本に来て5年経つし、意思疎通の方法を理解できるようになってきている」また、外国人ドライバーはファンの違いにも直面する。日本のレースファンは母国ドライバーを贔屓する傾向が強い。ニック・キャシディが次のように意見を述べる。「日本のレースファンは確かに独特だと思う。もちろん、彼らはモータースポーツ全般に情熱を持っていて、たとえば、F1日本GP全体を応援している。一方で、誰よりも日本人ドライバーを熱心に応援しているし、日本人ドライバーに世界の舞台で活躍してもらいたいと思っている。僕は彼らのこういう姿勢をリスペクトしているよ」ハイレベルな日本のレースニック・キャシディは、スーパーフォーミュラはかなりの接戦だとしている。「同一マニュファクチャラーの全マシンが僅差のラップタイムにひしめくのは日常茶飯事だし、プラクティスの機会が限られているからポイントを稼ぐのは楽じゃない。予選と決勝をパーフェクトに走ってチャンスを最大限活かす必要がある」ピエール・ガスリーは、日本のサーキットは学習するのが難しいと感じている。「ヨーロッパ出身ドライバーにとっては初めてのサーキットばかりだし、日本のサーキットは高難度でテクニカルだ。各サーキットを学習できる時間も限られている」「率直に言えば、日本のサーキットはどこも大好きだよ。ヨーロッパのサーキットとはかなり違っていて、ランオフエリアが少ないから、グラベルやバリアにすぐ突っ込んでしまう」ニック・キャシディは日本のサーキットの難しさについて次のように語る。「日本のレースはタフだと思う。1シーズンで7戦しか開催されないから、すべての予選と決勝でパーフェクトなパフォーマンスを見せないといけない」「ヨーロッパの長いシーズンでは、ドライバーがもっとプッシュできるし、勝てるなら多少のミスも許される。日本のシーズンは短いし、1回のレースウィークエンドで1レースしか開催されないから、少し勝手が異なるね」日本のサーキットは確かにチャレンジングだが、ピエール・ガスリーは日本のサーキットを賞賛しており、次のように付け加える。「オートポリスともてぎが大好きなんだ。というより、日本のサーキットはどこも本当にクールだね!」モータースポーツを取り巻く日本の特別な雰囲気とはいえ、日本は大変なことばかりではない。異国の地で戦うドライバーたちを支える人たちが大きな違いを生み出している。「僕がスーパーフォーミュラに参戦し始めた頃、レッドブルをはじめとする多くの人が僕を支えてくれた」とピエール・ガスリーは振り返る。「素晴らしい環境だったし、あんなに大きなサポートを得られたのは初めてだった。日本には良い思い出が沢山あるよ」ニック・キャシディは次のように語る。「日本でレースを戦うのは簡単ではない。日本に来たばかりのドライバーは考えていたほど楽ではないと感じるはずさ。そういうドライバーへ送れるアドバイスは『妙な期待をせず、敬意を持って戦え』だね」スーパーフォーミュラは、努力を惜しまないドライバーにその努力に見合った人生を提供してくれる。ピエール・ガスリーは次のような言葉で締めくくる。「スーパーフォーミュラは素晴らしいシリーズだよ。僕は大好きだった。文化も仕事の進め方も違うけれど、最高の経験になった」