2015年7月26日(日)、鈴鹿サーキットで鈴鹿8時間耐久ロードレース第38回大会の決勝が行われ、ヤマハは2002年以来となるファクトリーチーム「#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM」から中須賀克行、ポル・エスパルガロ、ブラッドリー・スミスの3人が「YZF-R1」で出場、204周を走破して1996年以来19年ぶり通算5回目の優勝を獲得した。午前11時30分、定刻にル・マン式スタートで始まった決勝では、スタートライダーを務めた中須賀克行のエンジン始動に時間がかかり、20番手前後まで順位を落とした。
しかし、6周目にトップグループの5番手に、14周目には3番手に浮上。そしてここから中須賀克行は、2番手の高橋巧選手(ホンダ)のスリップストリームを使い、究極とも言える燃費走行を敢行。するとこれが功を奏して、1スティント目を28周まで引っ張ってピットインし、これが後の戦いに余裕を持たせることとなった。2番手を務めたブラッドリー・スミスの走行時には、ライバルの津田拓也選手(スズキ)が130Rでコースアウト、さらにケーシー・ストーナー選手(ホンダ)がヘアピンで転倒するというアクシデントが発生し、次々とライバルが後退・リタイアしていく。こうして2番手に立ったブラッドリー・スミスは、ジョシュ・フック選手(ホンダ)とのマッチレースとなるが、55周目の第1コーナーでパスしてトップに立つとルーティンのピットインを行い、エスパルガロ選手にマシンを託す。ポル・エスパルガロも順調にトップを快走しますが、ここでセーフティカー活動中の追い越しで30秒のストップ&ゴーペナルティが科せられることとなる。そして、エスパルガロの次に出走した中須賀からマシンを受けたスミスがペナルティを消化するも、再びトップ争いは接戦に。しかし、3ライダーそれぞれの速さでライバルに勝る#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMは、レース終盤にトップを不動のものとすると、6回のセーフティカーが入る荒れた展開でチーム目標の218周には届かなかったものの、19年ぶりの優勝を果たした。中須賀克行「全日本のタイトルは5度獲っているけれど、鈴鹿8耐のタイトルは獲れずにいました。まさかファクトリー体制1年目で獲れるとは思ってもいなかったけれど、ポルとブラッドリー、チームスタッフ、そして応援してくれたファンの皆さんのおかげで優勝することができました。今回、MotoGPライダーとチームを組むことができて、彼らのレベルの高さが改めてわかったし、得るものも大きかったですね。それにしても表彰式は本当に感動しました。話しには聞いていたけれど、こんなにすごいものだとは思いませんでした。こうした環境を整えてくれたヤマハに本当に感謝ですね。ここ数年、スタートライダーを務めていて転倒しているので緊張しましたが、今回はエンジンがかからず本当に焦りました。たぶん20番手くらいまで下がったと思うけれど、うまく挽回できたし、1スティント目で28周まで引っ張れたのがひとつのキーポイントになりました。これでライバルにプレッシャーを与えられたのが大きかったですね」ポル・エスパルガロ「優勝できて本当にハッピーだよ! 心の中では涙が止まらない(笑)。信じられないレースだった。まずはチームメイトのふたりに謝りたい。僕のミスでレース中にペナルティが課せられ、タイムをロスしてしまったからね。でも、ふたりとも素晴らしい速さで走ってくれたし、僕もリカバリーするために200%で走ったよ。ヤマハの19年ぶりの優勝、そして中須賀さんの初優勝をチームメイトとして一緒に祝うことができて、とても光栄だよ。YAMAHA FACTORY RACING TEAMはまるで家族のようで、中須賀さんとブラッドリーとは親友になれたんだ。鈴鹿8耐は最高だよ! 鈴鹿は過去にも素晴らしいレースが数多くある伝説的なサーキットだからね。いつか走ってみたいと夢見ていたんだ。才能ある素晴らしいチームメイトと、歴史の1ページを刻むことができたのは、本当にうれしいよ」ブラッドリー・スミス「レースウィークが始まる前から、ずっと大きなプレッシャーを感じていたんだ。レース前、ヤマハ本社を訪れた時に、みんなに"優勝します"と約束していたからね。僕自身はレース中にちょっとミスをしてしまったけど、チームメイトふたりのおかげもあって、いいペースを守ることができた。素晴らしいマシンと素晴らしいチームメイトとともに、"優勝する"という約束を果たすことができてホッとしている。この優勝で、ヤマハの60周年に華を添えることができたと思う。鈴鹿8耐の優勝は、MotoGPのタイトルに次いで、ヤマハにとって重要な勝利だからね。ファクトリーとしての鈴鹿8耐参戦は、本当に素晴らしいプロジェクトだった。チャンスがあれば、また必ず参戦したい」吉川和多留監督「レースウィークでのポル選手の転倒や、レース中でのポル選手のペナルティなど、いろいろなことがありましたが、優勝することができ、関係者の皆さん、応援していただいた皆さんに感謝の気持ちで一杯です。それにしてもMotoGPライダーのレベルの高さには驚かされたし、改めてですが中須賀選手のスキルの高さに感服しています。ポル選手とブラッドリー選手は、事前テストまで鈴鹿サーキットを走ったこともなく、耐久用マシンに乗ったこともなかったのに、あっと言う間に好タイムを連発するようになりました。また、中須賀選手は、決勝レースの1スティント目で、我々が驚くくらい丁寧にマシンを操り、最初のピットインまで28周を走ってくれました。そしてこれが、その後のレース展開に余裕を与えてくれました。ライダー3人のキャラクターが融合した素晴らしいチームでしたし、チームスタッフも全力で彼らの走りをバックアップすることができました。今回の優勝はチーム一丸となってのものであり、改めて応援していただいたすべての皆さんに感謝します」
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