ハースF1のオリバー・ベアマンが、アイルトン・セナが1985年に初優勝を飾った伝説のマシン「ロータス97T」をシルバーストンでドライブし、その特別な体験に思わず涙を流した。現役F1ドライバーが歴史的なマシンを走らせる企画として実現した今回の試乗では、Sky Sports F1のカルン・チャンドックが案内役を務め、ベアマンはセナが初優勝を挙げた1985年エストリルGPのマシンと対面した。
「1985年へタイムスリップしたような気分」走行前のベアマンは、黒と金の象徴的なカラーリングをまとったロータス97Tを前に感激を隠さなかった。「1985年という時代へタイムスリップしたような気分だ。数時間後にこのマシンを運転できるなんて本当に信じられない」グッドウッドで同時代のF1マシンを見た経験はあったものの、実際にセナの実車を目の前にしたのは初めてだったという。さらに、セナ本人が1985年エストリルGPで残した直筆のセッティングノートも見せられ、「今と同じ専門用語が並んでいる。こんな貴重な資料を見ることができるなんて信じられない」と興味深そうに目を通した。コックピットに乗り込むと、当時のオリジナルシートやクイックリリース機構のない小径ステアリング、Hパターンのマニュアルシフトなど、現代のF1とはまったく異なる構造にも驚きを見せた。「セナは史上最高のドライバーの一人だ。その彼が初優勝を挙げたマシンを目の前にして、これから自分が運転できるというのは本当に感情が込み上げてくる瞬間だ」予定より1周多く走行「もっと走っていたかった」走行では、ターボエンジン特有のパワーデリバリーやマニュアルシフトを慎重に確かめながらシルバーストンを周回。予定されていた周回数を忘れてしまうほど夢中になり、1周多く走ったことも明かした。「ギアボックスの感覚やマシンのグリップをようやくつかめたところだった。あまりにも楽しくて、もっと走り続けたかった」現代のF1とはまったく異なるドライビングフィールについても、「とても軽快で俊敏だった。最後のほうにはかなり自信を持って走れるようになったけれど、当時のドライバーたちはさらに10秒近く速いペースで限界まで攻めていた。本当に信じられない」と歴代ドライバーへの敬意を口にした。ヘルメットの中で涙「レースを好きになった理由を思い出した」ピットへ戻ったベアマンは感極まり、ヘルメットの中で涙を流した。「本当に特別な体験だった」そう語ったベアマンは、涙をぬぐいながら今回の経験が自身にとってどれほど大きな意味を持ったかを説明した。「こういう日があると、自分がなぜレースを好きになったのかを思い出す」「僕はアイルトン・セナが走っていた時代をリアルタイムで見ていたわけではない。でも子どもの頃の僕にとって、セナはF1の王様だった。そのマシンを運転する機会をもらえたことに心から感謝している」また、1985年エストリルGPでセナが大雨の中、約1分もの大差を築いて初優勝を飾ったことにも触れ、「ドライコンディションでも十分難しかった。あのレースをウエットで戦ったことを想像すると本当に驚異的だ」と、その偉業の大きさを改めて称えた。今回の体験は、単に歴史的マシンをドライブしたというだけでなく、F1というスポーツの歴史と情熱を次世代へ受け継ぐ特別な一日となった。