ピエール・ガスリーのモナコGP表彰台復活を巡る論争が、新たな局面を迎えた。マクラーレンとレッドブルが異議を申し立てたことで、この問題はFIA国際控訴裁判所(ICA)で審理されることになった。今回の争点はガスリー個人の結果だけではない。誤ったペナルティが取り消された場合、レース中にペナルティを消化したドライバーとの公平性をどう確保するのかという、F1の競技運営そのものに関わる重要な問題として注目を集めている。
なぜ問題になっているのか発端となったのはモナコGPで発生したピットレーン速度違反だった。当初、ガスリー、フランコ・コラピント、オスカー・ピアストリ、ジョージ・ラッセル、ルイス・ハミルトンら複数のドライバーにピットレーン速度超過のペナルティが科された。しかしレース後、この違反判定がモナコ特有のピット入口に設置された計測ループの不具合による誤判定だったことが判明した。ピアストリやハミルトン、ラッセルらはレース中にすでにペナルティを消化していた一方、ガスリーはチェッカーフラッグ後に5秒加算ペナルティ2件を受けて3位から7位へ降格していた。アルピーヌは再審査請求(Right of Review)を提出し、FIAスチュワードはスペインGP週末に両ペナルティを取り消した。その結果、ガスリーは3位へ復帰し、アイザック・ハジャーは4位へ降格。ピアストリも順位面で不利益を受けることになった。マクラーレンとレッドブルが反発する理由両チームの主張は「誤審の訂正そのもの」ではなく、「訂正の結果として生じた不公平」にある。ピアストリを擁するマクラーレンは、誤ったペナルティであっても指示に従って実際にタイムを失ったドライバーと、ペナルティを消化しなかったガスリーが同じ扱いにならない点を問題視している。マクラーレンは声明で、「規則に従った競技者が不利益を被る結果となり、競技の公平性と規則適用への信頼を損なう」と主張した。レッドブルも同様に、ハジャーが表彰台を失ったことに加え、この判断が将来的なペナルティ運用に悪影響を及ぼす可能性を懸念している。F1パドック内では「今後、ドライバーやチームがペナルティを消化せず、後から抗議する方が有利になるのではないか」という懸念も広がっている。メルセデスの再審査請求との違いメルセデスもジョージ・ラッセルのモナコGPでのペナルティ取り消しを模索したが、こちらは再審査請求という別の手続きだった。再審査請求では、当時のスチュワードに対して「重要かつ新たな証拠」を提示しなければならない。しかしメルセデスはFIAおよびF1との協議後、ラッセルのケースを実質的に覆すことは不可能と判断し、申請を取り下げた。一方、マクラーレンとレッドブルはスチュワードの判断そのものを不服として正式控訴しており、問題はより上位機関である国際控訴裁判所へ移っている。国際控訴裁判所で何が行われるのかFIA国際控訴裁判所(International Court of Appeal)はモータースポーツ界における最終的な上訴機関である。FIA総会で選出された36人の裁判官で構成され、今回の案件では少なくとも3人の裁判官が審理を担当する。裁判所は以下の権限を持つ。■ スチュワード決定の支持■ 決定内容の修正■ ペナルティの軽減■ ペナルティの取消し公開審理ではマクラーレンとレッドブルが主張を展開し、それに対してFIA側が反論する。必要に応じて証人や技術専門家の証言も求められる可能性がある。今後のスケジュールと焦点今回の争点はガスリーのモナコGP表彰台だけではない。ICAがスチュワード判断を支持した場合、今後も同様のケースでレース後の順位修正が認められる前例となる。逆にガスリーの表彰台復活が取り消されれば、誤審があった場合でもレース中にペナルティを受けた競技者との公平性を優先する考え方が強まる。つまり、この裁定は今後のF1におけるペナルティ制度や抗議手続きのあり方に直接影響を与える重要判例となる可能性が高い。現在は両チームが控訴理由書を提出済みとみられており、その後FIA側の答弁書提出期間を経て、公聴会は7月中に開催される見通しだ。その結果次第では、モナコGPの最終順位と選手権順位が再び変更される可能性も残されている。
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