2026年F1スポーティングレギュレーション最新版で、モナコGPにおける2回以上のピットストップ義務付けルールが維持された。チームやドライバーからの批判にもかかわらず、FIAは方針を変えなかった。このルールは今年初めて導入されたもので、正式には第6.36条として規定され、レース中に最低3種類の異なるタイヤを使用することを義務付けている。狭く曲がりくねった歴史的市街地サーキットで、しばしば「最も退屈なレース」と評されるモナコGPに戦略的変化と興奮をもたらす狙いがあった。
しかし、5月のレースでは狙いが裏目に出た。オーバーテイクや迫力ある展開は増えず、むしろチームは疑問の残る戦術に走り、1台を意図的に減速させてもう1台の順位をピット作業中に守るといった行為が見られた。顕著な例はウィリアムズで、アレックス・アルボンが大きく減速し、チームメイトのカルロス・サインツがポジションを落とさずにピットインできるよう援護。この結果、メルセデスのジョージ・ラッセルが不利を被った。ラッセルはレース後、この駆け引きについて率直に批判した。「モナコでの解決策について本気で考える必要がある。今年2回ストップを試したことは理解するが、明らかにまったく機能しなかった」ウィリアムズ代表「キャリアで最も不快な瞬間だった」ウィリアムズ・レーシング代表のジェームス・ボウルズは、この戦略を擁護しつつも、倫理的な不快感を認めた。ボウルズによれば、この戦略は事前に計画したものではなく、レースの展開に応じたやむを得ない判断だったという。「はっきりさせておくと、我々が最初にやったわけではない。レースの流れに対応せざるを得なかった。正直、好きではなかった。システムを利用してポイントを取るのではなく、正々堂々と戦ってポイントを稼ぎたい」「それでも、我々がやらざるを得なくなった時点では残り1ポイントしか可能性がなかった。そうなれば選手権やポイント獲得を考慮せざるを得ない」「このルールがより良いレースを生んだのかどうか、その答えはファンに委ねたい。個人的には、このルールが生む“クリーンではないレース”は好きではない」協議なき継続に懸念ボウルズによると、2026年規則におけるこの義務化継続は、全10チームの代表が集まるF1コミッションでの協議を経ていないという。彼はこの点を懸念し、FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスに直接問題提起する意向を示した。このまま規則が固定されれば、次回のモナコGPまでにチームやドライバーの圧力で再検討が行われるかどうかは不透明だ。現時点では、F1の統括団体は「実験」を継続する姿勢を崩していないが、その効果には疑問が残っている。