今週末、F1はカレンダー第6戦の開催地であるアメリカ・マイアミへと向かう。マイアミグランプリに先立ち、統計データ、ドライビングのポイント、戦略のヒントなど、レースを楽しむために必要な情報を一挙に紹介する。今回はスプリントも実施されるため、イベントのフォーマットは通常の週末とはやや異なる。5月2日(金)にはフリー走行1回目とスプリント予選、5月3日(土)にスプリントとグランプリ予選、そして5月4日(日)に決勝レースが行われる予定だ。
基本データ■ 初開催:2022年■ サーキット全長:5.412km■ ラップレコード:1分29秒708(マックス・フェルスタッペン/レッドブル/2023年)■ 最多ポールポジション獲得者:シャルル・ルクレール、セルジオ・ペレス、マックス・フェルスタッペン(各1回)■ 最多優勝者:マックス・フェルスタッペン(2勝)■ トリビア:このサーキットはNFLマイアミ・ドルフィンズの本拠地である「ハードロック・スタジアム」敷地内に設けられている。■ ポールポジションからターン1のブレーキングポイントまでの距離:170メートル■ 2024年のオーバーテイク数:93回■ セーフティカー発生確率:67%■ バーチャル・セーフティカー発生確率:67%■ ピットストップによるタイムロス:19.9秒(停止時間2.5秒を含む)ドライバーによるコース解説ジョリオン・パーマー(元ルノーF1ドライバー):「マイアミは、現代の多くのサーキットと同様に、強いブレーキングを必要とするコーナーがいくつかある。ターン11とターン17がその代表例で、いずれも長いストレートの終わりにあるため、ブレーキ性能が重要になる。ここはオーバーテイクポイントであると同時に、ロックアップしてラップを台無しにする危険な場所でもある。第1セクターはS字が続く高速スイープで、ライン取りや縁石への対応が重要だ。少しでもラインを外すと、グリップを失ってしまう。ターン6~8の三重コーナー(トリプル・エイペックスの左)はフロント右タイヤに厳しく、レース中には特に問題になる可能性がある。また、このセクションの出口は長いストレートにつながっているため、抜け方が非常に重要だ」マイアミGP ポールポジション獲得者■ 2024年:マックス・フェルスタッペン(レッドブル)■ 2023年:セルジオ・ペレス(レッドブル)■ 2022年:シャルル・ルクレール(フェラーリ)マイアミGP 優勝者■ 2024年:ランド・ノリス(マクラーレン)■ 2023年:マックス・フェルスタッペン(レッドブル)■ 2022年:マックス・フェルスタッペン(レッドブル)ランド・ノリスは2024年マイアミGPでF1初優勝を達成した。タイヤと戦略の展望ピレリは、昨年より1段階柔らかいコンパウンド構成を持ち込む。■ ハード:C3■ ミディアム:C4■ ソフト:C5スプリント開催週末のため、スリックタイヤの配分が変更される:■ ハード2セット(通常通り)■ ミディアム4セット(通常より+1)■ ソフト6セット(通常より-2)■ 合計12セット(通常は13)※ウェットタイヤの配分は変わらない。ピレリの週末展望:「スタジアムを囲むこのコースは非常にスムーズな路面で、タイヤには中程度の縦・横方向の力がかかる。気温が非常に高くなると予想され、昨年は路面温度が55℃を超えた。熱による劣化(サーマル・デグラデーション)が主要な要素になるだろう。2023年に路面が再舗装されており、他の仮設市街地サーキットと同様に、週末を通して走行を重ねることでグリップレベルが大きく向上する。F1アカデミーやポルシェ・カレラカップ・ノースアメリカなどのサポートレースもその効果に貢献する。過去のマイアミGPでは一貫して1ストップ戦略が主流で、昨年は20人中15人がミディアムでスタートし、ほとんどがハードへ交換した。一部ドライバーがソフトを使ったが、意外にも劣化は少なかった。昨年使用されたC2~C4の3種類のタイヤは、性能差が比較的小さかった。戦略の鍵はピットストップのタイミングであり、バーチャル・セーフティカーからフル・セーフティカーへ移行したタイミングが影響を与えた。今年のより柔らかいコンパウンドが、2ストップ戦略の可能性を開くかどうか、注目される」スプリントは再びマイアミグランプリウィークエンドの一部として開催される。現在の勢力図マイアミGPの週末は、オスカー・ピアストリが新たにドライバーズ選手権の首位に立って迎えることとなる。前戦サウジアラビアGPでは3勝目を挙げ、ランキングトップへと躍り出た。雨に翻弄されたオーストラリアGPを除けば、ピアストリは2025年シーズン序盤を通して安定した強さを見せている。狙われる立場となった彼だが、マクラーレンのザック・ブラウンCEOは「彼はさらに強くなるだろう」と語っている。ただし、ライバルたちも油断ならない。チームメイトのランド・ノリスはランキングで10ポイント差ながら、昨年このマイアミの地でF1初優勝を果たしており、自信を持って戻ってくるだろう。一方、レッドブルのマックス・フェルスタッペンもマイアミでは2勝を挙げ、昨年はスプリントでも勝利している。前戦ジェッダでは5秒ペナルティを受けたこともあり、今週末にリベンジを期すだろう。フェラーリは、シャルル・ルクレールが前戦サウジで今季初表彰台を獲得。一方でメルセデスはやや影の薄い週末だった。今週末はどちらのチームが主導権を握るか、注目される。そして中団勢の争いも白熱している。前戦でのダブル入賞により、ウィリアムズがコンストラクターズランキング5位をしっかりキープしているが、ハースもわずか5ポイント差で続いている。アストンマーチン、レーシングブルズ、アルピーヌ、キック・ザウバーも虎視眈々と上位進出を狙う。スプリント実施により、貴重な追加ポイントを得られるチャンスとなるだろう。名場面:ランド・ノリス初優勝の瞬間(2024年)マイアミ・インターナショナル・オートドロームは、2022年の初開催以来、さまざまなドラマを生んできた。中でも印象的だったのが、昨年2024年のレースでランド・ノリスがF1初勝利を挙げた瞬間だ。土曜日のスプリントでは、1周目のターン1で起きた4台による接触の影響でスピンし、早々にレースから脱落したノリスだったが、日曜日には一転、運命が味方する。彼は第1スティントを引き延ばす戦略を取り、タイミングよく出動したセーフティカーに助けられ、ピットイン後は首位でコースに復帰。そのままリードを守り抜き、悲願の初優勝を成し遂げた。