メルセデスは、2018年F1マシン『W09』を発表。昨年、速さを見せながらも気難しい特性をみせた“ディーバ”を進化され、タイトル5連覇を狙う。メルセデスF1チームは22日(木)、シルバーストン・サーキットで新車『Mercedes-AMG F1 W09 EQ Power+』を発表。バルテリ・ボッタスとルイス・ハミルトンがシェイクダウンを完了させた。
メルセデスのモータースポーツ責任者を務めるトト・ヴォルフは「設計されたものが仕上がり、命が吹きこまれるのは常にエキサイティングなことだ」とコメント。「境界線をプッシュしようとしているときは、完全にシームレス、またはスムーズに行くものではない。我々は良い冬を過ごした。ドラマはなかったと言っておこう。だが、チームの全員にとって大変な作業だった」メルセデスの最高技術責任者を務めるジェームス・アリソンも「激しい冬だった」と語る。「プランナーは数千ラインのプランを立て、デザイングループは1日に数百のデザインを作成し、それを作れなければならない。テストと開発グループ、ダイナモを走らせるチームは、マシンがまだ熱いうちに組み立て、社内のあらゆるテストキットに配置できるようにしておかなければならない。それにより、我々はすべてが十分に強く、適切な形をもち、信頼性をもって機能することを確実にすることができる」チーフエンジニアを務めるアンディ・カウエルは「我々は謙虚なままで、これまでやってきた基本的な作業をやり続けたいと思っている。我々がやっていることに秘密はない。平凡で素直なエンジニアリング作業だ。フリクションを減らしたり、燃焼効率を向上させるアイデアがあれば、我々は非常に誠実な方法で議論をする。すべてのアイデアの源は、人間の創造性、情熱、そして、熱意だ」メルセデス W09のシェイクダウンは、サーキットのチームメンバーだけでなく、ブラックリーおよびブリックワスワースのメンバー、そして、メルセデスの従業員や世界中のファンが見守った。メルセデス W09の初走行を担当したバルテリ・ボッタスは「新車の設計と製造にどれくらい多くの時間が費やされたか、人々がそれにどれくらいの努力を注いだかを知ると本当に驚かされる。ドライバーとしてそのマシンをドライブできることは本当に特別な気分だ」とコメント。ルイス・ハミルトンも「全てが仕上がっているのを見ると謙遜してしまう」とコメント。「みんなが本当に長い時間、クルマにとても懸命に取り組んできた。とにかく走って、限界を引き出したい。僕はこのクルマを運転できる唯一の二人のドライバーのひとりだ。誇りに感じている。クルマを準備するためにどれくらいの仕事がなされてきたのかを知っているからね」昨季、メルセデスは12勝、15回のポールポジションを獲得する強さをみせたが、チームが“ディーバ”と呼ぶロングホイールベースのW08のバランス特性に苦しんだ。シルバーストンやモンツァのような高速サーキットでは圧倒的な速さを見せる一方で、モナコ、ハンガリー、シンガポールのようなタイトなコーナーのあるトラックでは苦戦を強いられた。しかし、今季マシンW09は、昨年と同じデザイン哲学が採用されている。同じDNAを持ち、同じホイールベースを採用し、わずかレーキ角をつけるにとどめた正常進化版“ディーバ”として誕生した。トト・ヴォルフは「我々はディーバのいくつかの特性を気に入っている。昨年、W08はグリッドで最速のクルマだったし、最多のポールッポジションを獲得し、大部分のレースで勝利した。なので、我々は困難を克服するだけでなく、クルマにある多くの強みを失ってしまわないように注意した」とコメント。ジェームス・アリソンは「昨年のクルマは我々が強かったトラックでさえ、機能させるのが容易ではなかった。週末を通して競争力のある結果を出す方法を見つけることができたが、それは決して簡単なことではなかった。我々はそこに踏み込んだと思っている。エンジニアとして今年のクルマは明白にダイヤルを合わせられるようにドライバーともう少し明確に話ができるものであることを願っている」「全体的に見れば、デザインは昨年よりもエリガントになっている。昨年のレギュレーションは完全に新しいものだったし、それらがどの方向に向かうのかあまり確信していなかった。なので、去年のクルマは、特定の部分を動かす必要があると分かった際に細かく適応できる余地を残していた。今年、我々は自分たちの目指すべきことにもう少し自信を持っているし、特定のコンセプトにもっとフルにコミットできるようになった。パッケージングはかなりタイトになっているし、より多くのことを極端に作ることができている」メルセデスの2018年型F1パワーユニット『M09 E Power+』は、年間使用数が削減された新しいレギュレーションに対応するために大幅なアップデートが施された。アンディ・コウエルは「今年のパワーユニットの変更量はかなり大きく、多くの要件によって決定されている。最大のチャレンジはドライバーにつき3基のエンジンと2基のERSシステムでレースをするという挑戦のために耐久性の限界を引き上げることだった。昨年と比較して、今年はハードウェアの寿命に必要な距離は40%増加している。我々はパフォーマンスを失うことなく寿命を延ばすことに集中した」とコメント。「また、全体的なマシンパフォーマンスのためにパワーユニットのパッケージングを変更したいと考えた。ブラックリーの同僚と非常に緊密に仕事をして、シャシー、トランスミッション、空力面でベストな総合的な統合を理解しようとしてきた。まだ、ペトロナスとの連携により、燃焼効率とハードウェアの摩耗低減にも取り組んできた」