メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、ベルギーGP後にチームオーダーに対する現在の方針を明かし、ジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリのどちらが前を走っていても「勝利を奪うことはしない」と強調した。一方で、スペインGPでの反省を踏まえ、両ドライバーが互いに時間を失うような争いは今後も避ける方針を継続する考えを示しており、ドライバー同士の自由なバトルとチーム全体の利益のバランスを重視する姿勢を打ち出した。
スペインGPの教訓で「ヨーヨー状態」を禁止ベルギーGPでは、メルセデスはジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリに対し、いわゆる「ヨーヨー状態(互いに抜き返し合ってタイムを失う展開)」を避けるよう指示していた。ヴォルフは、その背景にはスペインGPでの苦い経験があったと説明した。「スペインで大きくタイムを失ったことを教訓に、今回の目標は『お互いとの争いで時間を失わないこと』だった」「ヨーヨー状態になり、その間にフェラーリやレッドブルが背後まで迫ってきて勝利を逃すようなことは避けたかった。実際、スペインではそういうことが起きた。リタイアがなければ、キミがあのレースに勝っていただろう」スペインGPでは、ラッセルとアントネッリの争いによってタイムを失い、その隙にライバル勢の接近を許したことから、メルセデスは以降のレースで同様の状況を防ぐ方針へと転換している。「勝利を奪うチームオーダーは出さない」ただしヴォルフは、レース運営を優先することと、チャンピオンシップの順位を理由に勝者を入れ替えることは別問題だと強調した。「スペイン以降は、常にレースでの勝利を最優先にする。キミが前ならキミ、ジョージが前ならジョージを優先する。それが我々の考え方だ」「F1はドライバーズ選手権であると同時にコンストラクターズ選手権でもある」さらに、ベルギーGP終了時点でアントネッリがドライバーズランキングでラッセルに約50ポイントのリードを築いている状況でも、タイトル争いを理由にチームオーダーを出す考えはないと断言した。「我々はどちらのドライバーからも勝利を奪うことは決してない。たとえジョージがランキングでは後ろにいたとしても、その時点のシーズンで勝利を譲らせるようなことはしない」ヴォルフは、ランキングの状況にかかわらず、レースで先行しているドライバーの勝利を尊重することがメルセデスの基本方針であると改めて強調した。ラッセルへの全面サポートも約束ベルギーGPでラッセルはオープニングラップのアクシデントによりリタイアを喫し、ドライバーズランキングでもアントネッリとの差が広がる結果となった。それでもヴォルフは、苦しい状況に置かれたラッセルを全面的に支える姿勢を明確にしている。「少なくとも私がこれまで関わってきたドライバーは、誰でも苦しい時期を経験するものだ。それはあらゆるスポーツ選手に起こることであり、そういう時はモチベーションを高め、立て直す方法を見つける必要がある」「ジョージには彼なりのやり方があるし、私は間違いなくそれを支えようとしている。彼とは長い付き合いだから、その悔しさも理解している。チームは100%彼を支えている」勝利を最優先しながら公平性も維持現在のメルセデスは、無制限にチームメイト同士を争わせるのではなく、不要なタイムロスを防ぐためのルールを設ける一方で、ランキングを理由に勝者を入れ替えるチームオーダーは採らないという明確なスタンスを示している。コンストラクターズタイトル獲得を最優先事項としつつも、コース上で築いた勝利は尊重する――ヴォルフの発言からは、タイトル争いが本格化しても両ドライバーを公平に扱うというメルセデスの姿勢が改めて浮き彫りになった。