F1アゼルバイジャンGPでルイス・ハミルトンがステアリングホイールの“マジック”ボタンを押してしまったことで勝利の可能性を捨てたことにより、メルセデスF1の『ブレーキマジック』のセッティングが注目を集めている。マックス・フェルスタッペンのクラッシュよる赤旗後の残り2周のレースのスタートで、ルイス・ハミルトンは好スタートを切ったが、1コーナーのブレーキングでフロントタイヤをロックさせ、エスケープに滑り込んだ。
『ブレーキマジック』ボタンを間違えて押してしまったのではないかと疑問に思ったルイス・ハミルトンは、レース後、無線で「僕はマジックをオンのままにしてなかった? オフにしたと誓えるんだけど」と語った。過去にメルセデスのコックピットを撮影した写真の「CANCEL BRAKE MAGIC」の文字から話題になっていた『ブレーキマジック』は、ステアリングホイールの裏側に設置されたボタンを押すことでブレーキバランスが前寄りにし、制動時にMGU-Kに回生されるエネルギーをタイヤとブレーキの熱入れに使用するというもの。写真はニコ・ロズベルグのマシンのものであり、真新しいシステムではない。2014年にF1がターボハイブリッド時代に導入されたことで、従来のブレーキとMGU-Kの回生ブレーキのバランスをコントロールすることが必要になり、F1マシンには“ブレーキ・バイ・ワイヤ”が導入され、油圧ではなく、ソフトウエアでフレーキバランスをコントロールするようになった。そのため、現在のF1マシンでは、ブレーキバランスはコックピット内のレバーではなく、ステアリングのボタンやダイヤルで調整されている。メルセデスF1のブレーキマジックとは、ボタンを押してソフトウエアで通常55~60%の前後に制御されているブレーキバランスを、90%フロント寄りに変更するセッティング。これにより、セーフティカー中やフォーメーションラップで通常よりも素早くタイヤとブレーキを温めることが可能になる。F1アゼルバイジャンGPの赤旗後のリスタート前のフォーメーションラップでもブレーキマジックは使用され、グリッドについたハミルトンのマシンのフロントブレーキからは煙が上がっていた。ルイス・ハミルトンは、スタートにむけてブレーキマジックを解除したが、スタート直後のセルジオ・ペレスとのバトルの過程であやまってボタンを押してしまい、ブレーキバランスが前寄りになったことで1コーナーで止まることができなかった。メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ヴォルフは、今回のルイス・ハミルトンのリスタートは“ミス”ではなく「指の問題」と表現。前戦で、バルテリ・ボッタスのホイールが外れなくなり、ホイールガンの修正をしたメルセデスだが、次のグランプリに向けてステアリングホイールやブレーキマジックのソフトウエアの修正を迫られることになるだろう。 この投稿をInstagramで見る FORMULA 1®(@f1)がシェアした投稿