メルセデスとピレリによるタイヤテストの最大のミステリーは、なぜライバルチームが気づかなかったのかということだ。メルセデスとピレリによるタイヤテストが行われたのは、F1スペインGP直後のバルセロナ。だが、テストが行われたという事実が発覚したのはF1モナコGPの土曜日のドライバーミーティングだった。
長い間シーズン中のテストは禁止されており、ピレリは旧型マシンでしか限られたプライベートテストを行うことができない。だが、今回のメルセデスとピレリのテストは、現行マシンと現行タイヤで3日間にわたって行われた。そのため、フェラーリとレッドブルはすぐに抗議を申し入れた。F1で秘密を保っておくのは非常に難しい。メディアは必死になってリーク情報をかき集め、過去にはチームがライバルチームのクルマの接写写真をお金を払って入手していた。ヨーロッパの会場では、メカニックや宮殿のようなモーターホームを設置・解体するスタッフにさえ注目が集まっている。それでも、メルセデスは、F1スペインGP後のカタロニア・サーキットで3日間にわたる1000kmのテストを表面上は誰にも気づかれずに完了した。マクラーレンの“ガラス張り”のモーターホームや、レッドブルの“エナジー・ステーション”は解体に数日かかることがある。だが、メルセデスだけが荷造りをせず、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグがそこに残っていたのか、疑問に思った関係者もいるはずだ。メルセデスのモータースポーツ責任者トト・ヴォルフは「我々は全てをそこに残りしていた。ガレージ、バス、トラック、エンジニアリングオフィスの全てだ。何も秘密はなかった。我々はTwitterはしなかった。そうするべきだったか?」とテストを隠していたつもりはないと主張する。レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは「現役ドライバーが現行マシンをバルセロナのトラックで走らせたことを誰も知らなかったことは注目に値する」と述べた。「メルセデスは秘密を守るのがうまくと言わなければならない。誰かがそこにいるとか、去ろうとしているということなど大半のことは耳にする。だが、彼らはそれを著しく静かにしておくことができていた」メルセデスが、レギュレーションを無視したとわかった場合、ポイント剥奪、罰金、さらにはチャンピオンシップ除外というペナルティが科せられる可能性が囁かれている。また、この問題が明確になれば、シーズン中のテスト解禁への繋がり、“出費戦争”が再開してF1のコストが上昇する可能性がある。フェラーリは、シーズン中のテストの再導入を激しく推進しており、チーム代表のステファノ・ドメニカリは、抗議したのはそれが理由のひとつだと述べた。「それが可能であるならば、我々も同じことがやれるように真っ先に手を上げるだろう。ご存知の通り、フェラーリはずっとトラックでのシーズン中のテストをすることを常に推進してきたからね」テストが合法だったのか違法だったかに関わらず、メルセデスは間違ったことは何もしていないと頑固だ。ピレリとFIAの契約では、ピレリはテストを実施することはできるが、全チームに対してテストの機会を与えることが条件となっている。だが、ピレリとメルセデスのどちらもテストについて他チームに通知はしておらず、クリスチャン・ホーナーを含めた他のチーム代表は、その透明性不足に懸念を表明している。またピレリとメルセデスは否定しているが、メルセデスがアドバンテージを得るためにテストを実施したことは間違いないだろう。実際、すでにF1モナコGPのニコ・ロズベルグの優勝にも疑惑の目が向けられている。変更されたタイヤが持ち込まれる2週間後のF1カナダGPでメルセデスが力強いパフォーマンスをみせれば、テストはかなり悪質だったことが証明される可能性がある。クリスチャン・ホーナーは、メルセデスの振る舞いは“陰険”だと非難する。「クルマを走らせれるときは、常に信頼性、クルマのメカニカル面、タイヤの機能や挙動について学ぶものだ」「メルセデスがテストによって利益を得なかったと主張するのは信じがたいことだ」「今後のグランプリで使われることになるタイヤでのタイヤテストを実施することはどんな競争者にとっても利益となる」クリスチャン・ホーナーは、メルセデスはマシンを走らせるエンジン走行距離、コンポーネント、諸経費と物流において数十万ドルを費やしたと述べた。「我々はコスト削減について多くの話し合いをしており、まだシーズン中のテストに関する解決策を見つけるために金曜日に3時間を費やしている。だが、1つのチームが膨大な量のテストを実施した」