マクラーレンはアゼルバイジャンGPで2年連続となるコンストラクターズ選手権制覇の可能性を手にしており、同時にオスカー・ピアストリとランド・ノリスによる個人タイトル争いにも注目が集まっている。マクラーレンが昨年コンストラクターズタイトルを獲得した際、実に26年ぶりの栄冠だった。今年の彼らの支配的な戦いぶりを考えれば、次のタイトルはそれほど待たされるものではなく、「いつ」防衛するかの問題であり、「できるかどうか」ではない。
バクーはカスピ海沿いに位置する壮麗な市街地サーキットで、旧市街を縫うようにレイアウトされ、復活したアゼルバイジャンGPの舞台となる。昨季ここでピアストリが勝利を挙げたことでマクラーレンは選手権首位に立ち、その座を最後まで守り抜いた。今回はさらに有利な状況でバクーに戻り、栄光を目前にしている。現在、フェラーリに対して337ポイントもの大差を築いており、今大会終了時点で残る最大ポイント数は346。つまり、フェラーリとの差を9点以上広げれば、タイブレークを含めても追いつかれることはなくなる。マクラーレンがチャンピオンとなる条件は、フェラーリに対して少なくとも9点上回ること、かつメルセデスに12点以上、レッドブルに33点以上上回られないこと。今年、その条件を満たせなかったのはカナダGPのみで、その時はノリスとピアストリが接触、ノリスはリタイア、ピアストリは4位に終わった。一方でメルセデスが1-3、フェラーリも上回った。その他のレースでは圧倒的な安定感を見せている。16戦中12勝を挙げ、そのうち7度は1-2フィニッシュ。表彰台獲得は32回中27回に達している。1-2、あるいは1-3でも十分にタイトル防衛を決められる。ランド・ノリスは木曜のバクーで「今シーズン、僕たちがどれだけ強かったかを考えれば、このポジションにいるのは当然だと思う。自信を持たずにいる方が間違いだ。ただ、先週も見た通り、ストリートやローダウンフォースのトラックでは接戦になることもある」と語った。「シーズンのこの段階で選手権を決めようとしているなんて、とてつもない成果だ。2年連続で取れれば、僕にとってもチームにとっても最高のこと。これはチームに関わるすべての人の人生そのものだから、僕とオスカーで今週末に達成できれば素晴らしいことだ」ピアストリも「チーム全員の努力の証だと思う。こんなに早い段階でコンストラクターズタイトルを口にできるなんて驚異的だ。僕自身にとっても誇らしい瞬間。チームの努力の結晶を運転するのが楽しみだ」と語った。もし今週末に決めれば、史上最多となる残り7戦を残してチャンピオンとなる。これは2023年にレッドブルが打ち立てた6戦残しの記録を上回るもの。ただし、当時より今季はレース数が2戦多い点には注意が必要だ。さらにレッドブルの年間最多得点860を更新する可能性も高い(現時点で617)、また同じくレッドブルが2023年に記録した最大勝ち点差451(現在337差)も射程圏内にある。2016年にメルセデスが樹立したシーズン最多33回の表彰台記録も更新が見込まれる。後方ではフェラーリ、レッドブル、メルセデスが三つ巴となり、互いにポイントを奪い合っていることもマクラーレンに有利に働いた。それでもなお、10度目となるコンストラクターズタイトルは疑いなく相応しいものと言えるだろう。次に焦点が移るのはドライバーズ選手権だ。ピアストリとノリスの一騎打ちが続き、3位のフェルスタッペンはすでに94点差と遠ざかっている。マクラーレンはドライバー同士を公平に戦わせる方針を貫き、その結果、時に緊張を生む場面もあった。直近ではイタリアGPで、ピット作業の遅れで順位を落としたノリスに対し、ピアストリにポジションを戻すよう指示が出た。ピアストリは「モンツァの後、多くの話し合いをして、これからどう戦うのかを明確にした。それが一番大事だ」と語り、チーム内の理解は深まったと強調した。現在ピアストリはノリスに31点のリードを持ち、昨年のバクーでも勝利を収めている。ノリスも15番グリッドから4位まで追い上げた実績があり、逆転への自信を見せている。両者には今後も自由に戦う環境が与えられ、モンツァでの出来事はむしろ結束を強める結果となった。バクー・シティ・サーキットは6.003kmのレイアウトで、序盤は90度コーナーが連続するテクニカルセクション、旧市街を縫う狭い区間では壁に囲まれグリップも限られる。一方で、後半には約2kmの超高速ストレートが控えており、セッティングは難しい判断を迫られる。マクラーレンはこれまであらゆるタイプのサーキットで対応力を示し、ノリスとピアストリは拮抗したパフォーマンスを見せてきた。果たしてノリスが流れを引き寄せるのか、それともピアストリがタイトルへ一歩近づくのか。バクーはその答えを示す舞台となる。