F1モナコGPとインディアナポリス500。これはモータースポーツ界における2大レースであり、今世紀に入ってからの多くの年で同じ日に開催されてきた。このスケジュールによって、5月最後の日曜日はレースファンにとっての祝日となった。アメリカでは、F1マシンがモンテカルロの街中を走る様子をコーヒーとクロワッサンを片手に楽しみ、その後バーベキューの準備をしながらインディアナポリス・モーター・スピードウェイでのグリーンフラッグを迎えることができる。
これは祝うべき一日だ。なぜなら、この2つのレースは約7,200キロ離れて開催されるからだ。1日でインディ500とNASCARのコカ・コーラ600を完走する「ダブルデューティ」は聞いたことがあるかもしれないが、大西洋がモナコとインディを隔てている限り、1人のドライバーが同日に両方を走ることは現実的ではない。だが、チームであれば話は別だ。2020年以降、マクラーレンはF1とインディカーの両シリーズに参戦している。チーム運営はそれぞれイギリス・ウォーキングとアメリカ・インディアナポリスに拠点を構え分かれているが、マクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンという存在によってつながっている。53歳のカリフォルニア出身の彼は、両シリーズのパドックに頻繁に姿を見せる存在だ。ここ3年、ブラウンは常にある決断を迫られてきた。レース当日、彼はモナコにいるべきか、それともインディにいるべきか。しかし、このジレンマも今後は訪れない。F1とモナコとの契約延長により、開催日が6月へと変更されたからだ。つまり、2025年のこの日曜日が、モナコGPとインディ500が同日に行われる最後の機会となる。ESPNはこれを記念して、モンテカルロとインディアナポリスの両地に記者を派遣。この2つの伝統的なレースに同時参戦する唯一のチーム、マクラーレンの1日に密着した。F1の設計思想をインディアナへインディアナポリスでは、朝7時45分(現地時間)にF1モナコGPがスタートしたが、アロウ・マクラーレンのガレージではすでに作業が始まって2時間が経過していた。「もちろん、あっち(モナコ)のことは気にしてる。ボスがいるからね」と語ったのは、アロウ・マクラーレンのチーム代表トニー・カナーン。「でも、あまり見過ぎるわけにはいかない。こっちにもたくさん仕事があるから。あっちの様子は、あのテレビで流れてるよ」カナーンが指差したのは、インディ名物「ガソリン・アレー」にあるチームのオフィス。ドアには「チームメンバー専用」と書かれた紙が貼られていた。その中では、スポンサー関係者、ピット作業を終えたクルー、そして1970年代にマクラーレンでインディ500を2勝したジョニー・ラザフォードらが、コーヒーとモナコ中継を求めて集まっていた。「F1の仲間たちがどうしてるかは、いつも気にしてる」と語るのは、6度目のインディ出場となったパト・オワード。「F1と僕らは違う世界だけど、どちらもレースであることに変わりはない。F1チームがあそこまで成長したのを見て、僕らも必ずそこに行く。そして、彼らもそれを望んでる」マクラーレンは今や24時間稼働するチームだとカナーンは言う。「我々が寝ている間に、向こうは働いている。そしてその逆もある。F1とインディのエンジニアたちは、両方のシリーズを常にモニタリングしている。車がどこかで走っていれば、マクラーレンのレースコントロールは必ず見ている」同じチームでF1とインディを同時に戦うというのは、まさに現代マクラーレンの特徴だ。NASCARとの「ダブルデューティ」に挑むカイル・ラーソンも、こう語る。「このチームにいて学んだのは、誰もがレースを愛してるということ。F1からインディへのフィードバックが可能なら、逆もしかり。ザクはそこを真剣に考えてる」昔のマクラーレンでは考えられなかったという。ジョニー・ラザフォードは言う。「昔は完全に別物だった。F1はF1、インディはインディ。何が互いに助けになるのか、まったく分からなかった」だが今は、F1とインディの両方を支える技術連携が現実のものになっている。今年4月の中国GPではノリスとピアストリが1-2を達成。インディカーでも同時期にオワードとルンガーが2-3位に入り、あと少しで1976年5月以来となる同日勝利の再現だった。シャンパン片手にモナコ観戦ランド・ノリスがモナコでのポールを獲得すると、ザク・ブラウンの迷いは消えた。彼はそのままモナコに留まり、妻とともに祝勝会に参加した。「モナコで勝てるチャンスがあるなら、俺はここにいる。ないならインディに行く。両方で勝ってるのに、どっちにもいなかったなんて最悪だろう?」とブラウンは語った。そしてノリスがモナコGPを制した瞬間、それは正しい選択だったと証明された。F1ではレースが終わってようやく、インディ500への関心が高まる。だが、モナコがイモラとバルセロナに挟まれた3連戦の真ん中にある今、マクラーレンの多くのスタッフはレース直後にニース空港に向かっていた。ターミナルでiPad越しにインディを見るのが関の山だ。「ホテルで見るつもり」とブラウンは語ったが、「観戦者としては? いや、全然ダメ。落ち着いて見られないよ」と苦笑いを浮かべた。実際、マクラーレンにとってインディの結果は複雑だった。オワードは4位に入ったが、勝者はマクラーレンとの契約トラブルを抱えるアレックス・パロウだった。モナコ在住のピアストリは、「家のソファで見るつもり」と語り、ノリスに向かって「招待してくれれば行くけど」と冗談を飛ばした。だがノリス自身は、インディ500に出るつもりはないと明言した。「やらないよ、絶対に。今ここで言っておく。全然興味ない。自分の趣味じゃない。でも、向こうのドライバーたちには大きな敬意を抱いてる。F1でもやれるような実力者もいると思う」と語ったうえで、こう付け加えた。「でもね、俺は右にも曲がるのが好きなんだよ。それが一番の理由だね」
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