マクラーレンのエグゼクティブディレクターを務めるザク・ブラウンは、2020年以降のレギュレーションに関する議論における政治的な論争を最小限にとどめたるには、F1が決断力を持って取り組んでいく必要があると主張する。F1の新オーナーとなって2年目のシーズンを迎えるリバティ・メディアは、F1の長期的な将来に疑問を抱えたまま新シーズンを迎える。
これまでリバティメディアは、セッション時間の変更やグリッドキッズの採用といったマーケティング面で変革をもたらしてきたが、2018年にはレギュレーション改定に向けた交渉という大きな案件が待ち受けている。昨年、リバティメディアが2021年のF1エンジン案を公表した際、フェラーリはF1撤退をも辞さないという強硬な姿勢を示している。ザク・ブラウンは、今のF1にはそのような政治的な論争に対応している余裕はないと強調する。「2021年以降の交渉が大きく荒れるのは間違いないだろう。商業面に関して、彼らはすべてをうまく進めていると思う。いくつかのミスを犯すこともあるだろうが、すべてで満点を取れると考えるのはアンフェアだろう。彼らも学んでいく。ただ、彼らがやろうとしていることや、これまでに行ってきた努力には満足している」 「FIAとリバティメディアは素早く行動する必要があると思っている。交渉が短期間で終了することを願っている。おそらく荒れるだろうし、長引けば長引くほど分裂することになるだろう」「それに2021年にむけて完璧な準備していくなかで、新しいメーカーやチームが参入することなれば、数年の時間を要することになるし、時間はない。今シーズンの中盤には2021年がどうなっているかを把握できるところまで到達していたい。それ以上、長引くけば、かなりチャレンジングになるだろう」 既存のF1エンジンメーカー3社のうち、メルセデスとルノーもリバティメディアが提示した2021年のF1エンジン案にはフェラーリのスタンスに同調している。しかし、将来の予算制限や分配金の計画に関しては異なる見解を持っている。長年、フェラーリは分配金で特別ボーナスを得ており、レギュレーションへの拒否権という特権を有してきた。マクラーレンやレッドブルといったF1チームは、フェラーリがF1の意思決定プロセスに関わっていることを疑問視している。ザク・ブラウンは、リバティメディアとFIAがメーカーやF1チームを納得させるためには、より明確にビジョンを説明する必要があると考えている。「リバティメディアは、彼らがどの方向に向かいたいと思っているかをチームに対して明らかにしていると思う。完全に具体的とは言わないが、方向性は示した。エンジン、コストキャップ、収益分配などの内容は全員がわかっている。ただ、収益分配がどのようなものになるかという具体的なことは何も聞いていない」 「あらゆるメジャースポーツの中でもF1はトップからラストまでの差が最も大きい。彼らはその差を縮めなければならない。コストはまったく制御できておらず、おそらく現代においてスポーツに関してコストの対策が取られていないのはF1が世界でも唯一の業界だろう。そうしなければならない。私はそれを最優先すべきだと考えている。他の者よりも多くの儲けがあっても、それが今のように大きな差を生むために費やさないであれば、私は問題ないと思っている」