レーシングブルズはカタールGP終了時点で翌2026年シーズンのドライバーを唯一公表していなかったが、その最終判断はレース直後のパドックで急速に固まりつつあった。チーム代表アラン・パーメインが語った通り、評価の流れはリアム・ローソンへと大きく傾き、レッドブル・レーシングのチーム代表ローラン・メキースも「火曜日に発表する」と明言。決定直前の段階で、ローソン残留は事実上の既定路線となっていた。
カタールGPでは、アイザック・ハジャーが終盤のトラブルでリタイアとなる中、ローソンは9位でフィニッシュし、2点の貴重なポイントを持ち帰った。アストンマーティンがフェルナンド・アロンソの入賞で差を縮めるなか、ローソンが確実にポイントを積み上げたことは、コンストラクターズ6位争いにおける大きな意味を持つ。また、このレースで彼は角田裕毅の直前でチェッカーを受け、直接比較という最も明瞭な材料でチームに存在感を示した。短期昇格と降格の挫折から評価を立て直し、ハジャーとの比較で優勢に英『The Race』は、ローソンが「評価を立て直した」と指摘している。わずか2戦で降格となった2024年終盤からの苦しい状況を経て、2025年はハジャーと同じ環境で結果を積み上げ、地道に信用を取り戻した。ザントフォールト以降の得点では、ハジャーが14点だったのに対し、ローソンは18点を記録した。点差は大きくはないが、シーズン後半の詰まった中団戦でこの差をつけることは容易ではない。安定してポイント圏に顔を出したこと、そして荒れたレースで順位を拾い上げる能力を示したことが、ローソンの評価を押し上げた。本人はカタールGP直後、「まだ何の知らせも受けていない」と語ったが、Sky F1 のテッド・クラビッツは早い段階からローソン残留を確信していたという。チーム内部でも同様の判断が進んでいたと考えられる。ホンダの意向があっても覆らなかった“今季の差”ホンダは2026年以降レッドブルとの提携を解消するものの、旧型車テスト(TPC)での協力や将来的な関係維持の観点から角田裕毅の継続起用を望んでいた。しかし、その“後押し”が最終判断を左右する決定力にはならなかった。角田は今季、フェルスタッペンに300点以上の大差を付けられ、レッドブル昇格後のパフォーマンス不足が問題視されていた。一方、ローソンはレーシングブルズ内の直接比較で角田を上回り、ランキングでも優位を保ったまま最終戦アブダビを迎えている。結果と内容の両面で、ローソンの方が「来季に向けた確実性が高い」という判断がチーム内で共有されていたと見られる。アグレッシブさと速さを兼ね備えた“F1が求める若手像”ローソンは時にルクレールとの接触など、攻めすぎる場面もある。しかし、それは裏を返せば、フロントランナーと戦おうとする姿勢を失っていない証でもある。予選と決勝の双方で示した鋭いスピード、混乱の中で順位を拾う嗅覚、そしてリスクを取る瞬間の判断力――これらはチームが高く評価するポイントであり、エンターテインメント性と競争力を両立させる存在として、現代F1が求める資質に一致している。2026年はローソンとリンドブラッドの“バランス型”ラインナップへ若干18歳のアービッド・リンドブラッドは、ヘルムート・マルコが「次のチャンピオン候補」と語るほどの高いポテンシャルを備えるルーキーである。レッドブルは2026年のレーシングブルズを、経験と安定性を持つローソンと、純粋な速さと将来性を持つリンドブラッドという、バランスの取れた構成で臨む見通しだ。結局のところ、チームは角田裕毅を放出し、ローソンの働きと成長を重視する決断を下した。2026年のレーシングブルズは、新たな若手コンビで中団勢に挑むことになる。