ランド・ノリスは、シーズン最終戦アブダビGPの残り2周で、自分の頭の中に何が浮かんでいたのかを振り返った。初のF1ドライバーズタイトルに向けて走っていた、その最中の思考だ。マクラーレンのノリスは、ヤス・マリーナ・サーキットで3位に入り、勝利したマックス・フェルスタッペンにわずか2ポイント差でタイトルを奪った。オスカー・ピアストリとともにMCL39でシーズンを支配してきたが、終盤にフェルスタッペンが猛追し、三つ巴の緊張感あふれる最終決戦となっていた。
「人生で最大のレースを前にした1週間は、どう振る舞えばいいのか分からなかった」とノリスは振り返る。「すごくワクワクしているべきなのか、怖がるべきなのか分からなかった。かなり緊張すると思っていた。僕は毎レース、毎回の予選で緊張するし、それは普通のことだと思っている」「自分には少しカオスすぎるんじゃないかと思っていた。でも実際にクルマに乗り込むと、かなり準備ができていると感じた。とても落ち着いていた。ただの仕事の日みたいな感覚だった。頭の中では『これだ、時が来た』と分かっていた」一方で、本人はそれが普通のグランプリのように感じられたとも語っている。「本当に、普通のレースみたいに感じた」しかし周回が進むにつれ、思考は次第にさまよい始めた。「残り2周になると、時間が少し遅くなる。クルマの中のネジ1本、ボルト1本、ワイヤー1本まで考え始める。すべてがうまくいっているからこそ、『何が起きるか分からない』って考えてしまう」「そんな小さなことを考え始めたあと、最初にゴーカートに乗った日のことを思い出した。小さなテニスコートみたいな場所で、スリックタイヤを履かせて、ドーナツターンをして遊んでいた」「そこから先の年月が、ラップを走りながら頭に浮かんだ。本格的なレースに進んで、ヨーロッパに渡って、2014年の世界選手権、フォーミュラ4、ジネッタ、ニュージーランド、ヘレス、F3、F2。運転しながら、変なことをしないように気をつけつつ、頭の中に次々と映像が流れていった」「そういう全部を思い浮かべながら、ただそれを覚えておこうとしていた」最終セクターに差しかかったとき、ノリスの思考は家族へと向かった。「ホテルの下をくぐるあたりまで、だいたいそんな感じだった」「突然、ガレージにいる母の姿が浮かんだ。その瞬間が、この1年で初めて『何が起きているのか』『これから何が起きるのか』を実感し始めた瞬間だった」「最後の4コーナーでは、ガレージにいる両親、兄弟、姉妹の姿を思い浮かべていた。最終コーナーを立ち上がると、そこから感情と実感が一気に押し寄せてきた」「この18年間すべてが、この一瞬につながっていた」