桜井孝太郎が、フランスのポール・リカール・サーキットで開催された今季第1回目のGP3公式合同テストに、名門カーリン・モータースポーツから参加した。前日、総合14番手、ウェットセッションでは7番手のタイムをマークした桜井孝太郎は、セッション終了後に3人のエンジニアと共に各ドライバーとのデータ比較をし、自らの長所や短所を理解。
立ち上がりでのアクセルオンのタイミングは非常に良いが、ブレーキングでの自信からか、やや突っ込み過ぎの傾向があると指摘され、細かな部分の修復を考えながら翌日の走行へのイメージを高めた。前日同様、午前9時から12時、午後2時から5時までのトータル6時間のテストを前に、カーリン・モータースポーツのピットでは今回のテストの目的が説明された。GP3は開幕戦までに限られた日数しか公式テストが実施されないため、レースで勝つために、より多くのセッティングデータ収集が必要。予選用、決勝用にそれぞれ考え方を変えて、データを収集することになった。桜井孝太郎は決勝用のデータ収集を担当。元セバスチャン・ベッテルを担当したエンジニアの指示のもと、4〜7周を1スティントとして、何度もセットアップを変更し、ニュータイヤを次々と投入しながらハンドリングの変化やタイヤ温度の変化、磨耗等をチェック。フロントやリヤのウィングのフラップをきめ細かく調整しながらドライバーのフィーリング変化を確認する作業に終始した。トータル102周、みっちりとテストをこなした桜井孝太郎に、チーム代表のトレバー・カーリン氏が肩を叩きながら、グッドジョブと笑顔を見せた。桜井孝太郎「ポールリカールは最新のテスト・サーキットとして設計されているため、コースアウトしても広いエスケープがあって、攻めすぎてもクラッシュはまずしません。いろいろなデータを収集するには最適のサーキットです。今回のGP3の合同テストは、僕自身のドライビングの練習のつもりで来ていたのですが、チームにとってはすでに開幕戦に向けてのデータ収集のための時間なのだと、改めて感じさせられる内容でした。GP3のレースはF1のサポートレースとして行なわれるため、レースウィークは本当に時間との戦いです。練習走行でセッティングの判断をひとつ間違えると、予選、決勝のすべてに影響するシビアな世界でもあります。それだけに、事前テストがより重要な意味を持つのだと、史上最年少F1世界チャンピオンのセバスチャン・ベッテルを育てた担当エンジニアに説明され、僕も自分の役割を理解し、納得しました。セッション開始直後から、何度も無線でピットに呼ばれ、次々とセットアップを変更しては、コースイン。その都度、タイヤ温度の変化や区間タイムの変化をチェックし、僕にコメントを求めてくれるのですが、そのテンポの早さとセットアップの種類の多さに最初は戸惑いました。真剣に考えてきちんと発言しないと、クビになりそうな雰囲気だったからです(笑)。マシンから降ろしてももらえず、機械のように走り込みました。先輩のデイリー選手と同じセッティングで0秒2しか違いませんでしたから、タイムは問題ないと言われましたし、逆に自信もつきました。プロの職場に足を踏み入れた気分です。緊張の連続の2日間でしたが、新たなステップを踏み出せたと思います。いまは次のシルバーストン・サーキットでのテストが待ち遠しくて仕方ありません!!」トレバー・カーリン「シーズン開幕までの限られた時間を有効に使うために、今日は3台とも異なったプログラムでセッティングを進めました。予選用のセットアップはドイツF3チャンピオンのトムが担当し、孝太郎とデイリーには決勝用のセットアップを試してもらいました。特に孝太郎のマシンには数多くのセッティング変更を施し、それに対してきちんと理解し、評価し、正しく自分のフィーリングをコメントできるかどうかをチェックしました。彼と仕事をするのはまだ初めてなので、ドライバーとしての能力をもう少し確認したかったのです。いたずらにタイムアタックさせる意味はいまの段階ではありません。マシンが完璧なら、彼はタイムを出せるドライバーだということは、昨日の滑りやすい路面で充分わかっています。今日は我々にとって、孝太郎をテストするのがひとつの目的でもありました。もちろん、彼は予想以上に素晴らしい仕事をこなしてくれましたし、充分に我々を満足させてくれました。今日のテストの結果を一言でいえば、合格です(笑)」