桜井孝太郎は、イタリアのモンツァ・サーキットで開催されたイギリスF3選手権開幕戦にハイテック・モータースポーツから参戦したが、2周目にクラッシュリタイアを喫した。レース開催1週間前に、新装されたスネッタートン・サーキットで実施された最後の公式テストで、極端に高くなった縁石に撥ね上げられモノコック全損のクラッシュに見舞われた桜井孝太郎は、チームの懸命な努力によってなんとか組み上がったマシンとともに金曜日の早朝にモンツァ・サーキットに入った。
土曜日の1時間のフリー走行が実質的なシェイクダウンという状況の中、順調に周回を重ねた桜井孝太郎だったが45分を過ぎたことろでミッショントラブルにより最終コーナーでコースオフ。予選に向けて多少の不安を残す展開となった。その不安が的中し、予選ではセッション早々にタイヤ交換のためにピットインしたところエンジンが再始動せず、万事休す。最後尾からのスタートが決定した。土曜日の第1レースは多くの混乱に見舞われた。ポールポジションのマシンが出走準備に間に合わず、ピットスタート。桜井孝太郎は素晴らしいスタートダッシュを見せて、21番手グリッドから一時は8番手まで浮上する走りを見せ、1周目を12番手でクリアし、ルーキークラスのトップを快走。しかし2周目にセーフティーカーが入り、レース再開直後の混乱の中、前車をオーバーテイクしようと右横にマシンを振ったその場所に、桜井孝太郎のさらにアウトを狙ったマシンが並びかけ、後方からもう1台のマシンが続き、行き場を失った桜井孝太郎は前車のリヤタイヤをヒット。高く宙に舞いながら裏返り、そのまま地面に激突。ロールバーを地面に擦らせながら滑走してタイヤバリアに突っ込んだ形でようやく停止した。回収された桜井孝太郎選手のマシンのデータロガーからは、時速240キロで接触して空中に舞ったことが確認されました。すぐに救急車でメディカルセンターに運ばれた桜井孝太郎だったが、幸い大きな外傷はなく、検査の結果、奇跡的にも身体に異常は無しと診断された。しかし残念ながらマシンの損傷は激しく、ロールバーは半分が削れ落ち、エンジンの吸気ポッドも半分が擦り切れてなくなっている状態。裏返って押しつぶされたモノコックの損傷は著しく、ちょうどドライバーの肩の部分にそって真横にクラックが入り切断されている状態だった。レース後、競技長のもとに招聘され、事情聴取された結果、あくまでレーシングアクシデントであり、桜井孝太郎にペナルティは課せれられなかった。しかし、マシンの修復は不可能な状態で、チームは日曜日に開催される第2戦、第3戦に出走を取り消す決断をせざるを得なかった。桜井孝太郎「予選でのトラブルが結果的に大きかったですね。セルモーターが回らずコースに戻れなかった。その結果、決勝レースは攻めのレースを強いられましたが、最後尾から上手くスタートを決め、2周の間に8台をパスし、全体の12番手まで上がってNクラスのトップを奪ったところまでは完璧でした。しかしセーフティーカーが入り、チームとの無線交信がうまくいかず、完璧な再スタートが切れませんでした。トップを奪い返そうと接近戦の中、スリップストリームで続いたのですが、狭いモンツアで前後左右をふさがれ、行き場を失って接触してしまいました。空中に舞って裏返り、逆さまの状態で地面に落ちて頭の上から火花が散りながら滑走している時は、さすがにびっくりしました。ヘルメットが削れてると勘違いしてたんです(笑)。でも本当に身体に怪我がなくて良かったです。しかし同時にチャンピオン争いで大きく出遅れてしまった事実も、素直に受け止めなければいけません。接近戦でのアクシデントは起こり得ることだし、チームのミスでもありません。自分がヨーロッパのドライバーと戦ううえで、まだまだ未熟な部分があった事もわかりました。日曜日の第2、第3戦に出られなくて、ポイント争いで引き離されるのは悔しいですが、残りの27戦を全部勝ちにいけばいいと思うしかないです。いまは来週のレースのことを考えるだけです。せっかくマーク・ウェバー選手のように空を飛ぶ経験もし、彼の気持ちもわかったのですから、この経験を生かさないと(笑)。僕は負けたままで終わる気はありませんからね」