ストンマーティンとタッグを組んで2026年F1新レギュレーションに挑んだホンダだが、開幕から6戦を終えた時点で厳しい戦いを強いられている。アストンマーティンは依然として下位グループでの戦いが続いており、パワーユニット性能を巡る議論もパドック内で絶えない状況だ。これまで苦戦の要因については様々な憶測が飛び交っていたが、ホンダは今回、その背景にある技術的課題を初めて詳細に説明した。
2026年レギュレーションで何が変わり、なぜ開発が難航したのか――その実情が明らかになっている。ホンダF1プロジェクトの責任者の一人である角田哲史は、SoyMotor.comの独占取材に対し、現在の苦戦が単一の問題ではなく、2026年のレギュレーション変更によって生じた複数の技術課題の積み重ねであることを明かした。50:50化したERSがエネルギーマネジメントを激変2026年F1レギュレーションで最大の変化のひとつが、内燃エンジン(ICE)とエネルギー回生システム(ERS)の出力比率だ。従来よりも電動化の比重が大幅に高まり、ICEとERSの出力割合は事実上50:50となった。角田哲史は、この変化がパワーユニット運用を根本から変えたと説明した。「ICEとERSの比率が50:50となり電動化が進んだことで、特にエネルギーマネジメントに関する運用は著しく複雑になりました」単純に高効率なエンジンを開発するだけでは不十分となり、どのタイミングでエネルギーを回収し、どれだけ蓄え、いつ放出するかがパフォーマンスを左右する時代になった。2026年型パワーユニットでは、このエネルギーマネジメント能力そのものが競争力の核心になっている。圧縮比変更で燃焼コンセプトを全面刷新ホンダが直面した2つ目の大きな課題は、内燃エンジンの圧縮比変更だった。2025年世代では約18:1だった圧縮比が、2026年には16:1へ変更された。数字だけを見ると小さな変化に見えるが、実際には燃焼効率や燃焼特性そのものに大きな影響を及ぼす。角田哲史は次のように説明する。「圧縮比や燃料に関する大幅なレギュレーション変更により、エンジンの燃焼コンセプト全体を見直す必要がありました。これは非常に大きな挑戦でした」2026年のパワーユニットは外見上こそ同じ1.6リッターV6ターボハイブリッドだが、内部では従来とはまったく異なる考え方で設計されている。100%持続可能燃料がさらなる難題に3つ目の要因は、2026年から導入された100%持続可能燃料だ。この新燃料は従来の燃料とは燃焼特性が異なり、エンジン開発に大きな影響を与えた。圧縮比変更と新燃料導入が同時に行われたことで、ホンダは燃焼設計をほぼゼロから再構築しなければならなかった。結果として、同じV6ターボハイブリッドという形式を維持していても、その実態は2025年のパワーユニットとは別物になったという。ホンダは2026年開発競争への出遅れも認めるホンダは技術的な難しさだけでなく、自社の体制面にも課題があったことを認めている。2021年末にF1活動を終了した際、ホンダはさくらの施設にあるHRCのエンジニアリング体制を縮小した。その後、2023年5月にアストンマーティンとの提携を発表してF1復帰を決定したが、その時点で開発組織の再構築が必要だった。角田哲史は次のように語った。「ホンダの場合、2021年のF1撤退後にHRC Sakuraの開発体制を縮小しました。その後、2023年5月の復帰発表以降に開発組織を再構築する必要がありました」「その再建に時間を要したことで、一部のライバルよりも新パワーユニット開発に使える時間やリソースが少なくなりました」これは以前からパドック内で指摘されていた見方を裏付けるものだ。例えばアウディは2022年から本格的な2026年プロジェクトを進めていた一方、ホンダは開発組織の再整備と並行して開発を進めなければならなかった。アストンマーティンとの新体制とPU予算制限も重荷に2026年はシャシーとパワーユニットの両方が全面刷新された特別なシーズンでもある。さらにF1史上初めてパワーユニット開発にも予算上限が導入された。その中でホンダは、新たなワークスパートナーとなるアストンマーティンとの協業体制も同時に構築しなければならなかった。角田哲史はこう説明する。「2026年はシャシーとパワーユニット双方のレギュレーションが大きく変更されました。さらに初めてパワーユニットに予算上限が導入されています」「そのような非常に厳しい環境の中で、ホンダとアストンマーティンは初めて協力関係を築くことになりました。多くの面で大きな挑戦だったと言えます」ホンダが直面したのは一つの失敗ではない現在、アストンマーティンとホンダの苦戦はしばしば「パワー不足」という一言で語られる。しかし今回の角田哲史の説明から見えてくるのは、単なる出力不足ではなく、2026年レギュレーションがもたらした複数の技術革命への対応に苦しんでいる姿だ。電動化の大幅強化、燃焼コンセプトの刷新、100%持続可能燃料への適応、開発組織の再建、予算制限、そしてアストンマーティンとの新たなパートナーシップ構築――。ホンダが直面している課題は一つではなく、それらが同時に重なった結果として現在の状況が生まれていることを、今回の説明は示している。