ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治が、F1アメリカGPの決勝レースを振り返った。F1アメリカGPでは、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが優勝。ホンダF1にとっては1991年にアイルトン・セナがフェニックスで優勝して以来30年ぶりののF1アメリカGP制覇となった。スタートでルイス・ハミルトンに先行を許したマックス・フェルスタッペンだが、1回目のピットストップでアンダーカットを成功させたことが勝敗の鍵となった。
第1スティントで、マックス・フェルスタッペンはルイス・ハミルトンよりもペースが速かったが、オーバーテイクには至らず、追従していることでオーバーヒートのリスクもあった。そこで10周目という早い段階でピットインしてハードタイヤに交換。13周目にハミルトンがピットインしてコースに合流したときには6秒前に出ることができた。アンダーカットを成功させるには、ピットストップ後にフリーエアでタイムを稼ぐ必要があり、それはレース全体の燃費に影響する。ホンダF1として何か対応はしたのだろうか?「フリー走行などで事前に試しています」と田辺豊治は説明する。「タイヤの摩耗、リフトオフ、エネルギーマネジメントのセッティングなど、いろいろなセッティングを試していたので、それらをレース中に組み合わせて使うことができました」F1アメリカGPでは、メルセデスがストレートスピードを改善するために、リアの車高を下げてディフューザーをストールさせてダウンフォースを軽減させるデバイスが話題になった。ホンダとして、メルセデスのストレートスピードはどのように考えているのだろうか。「ストレートの加速やトップスピードは、パワーユニットの性能に直結しているので注視はしています」と田辺豊治はコメント。「低速や中速でクルマが曲がらない場合にはダウンフォースをつけます。逆にマシンがよい状態でもダウンフォースをつけるというのが基本的な考え方です」「クルマのパッケージとして見えうと、おしなべてトップスピードで負けていると思っています。車両で何かの工夫をしていて、それが合法なのかどうかは、ホンダがコメントすることではないですし、分からないのでチームに確認してほしいです」ホンダF1は、F1アメリカGPでマシンにアキュラのロゴを掲載した。「ホンダとアメリカの関わりには長い歴史があります」と田辺豊治は語る。「ホンダは、アメリカでブランドとして多くの方に愛されており、アキュラの認知度も高い。その昔、我々のドライバーがバイザーにアキュラのロゴをつけて走ったことがありましたが、今回も多くの歓声をいただきました。そうしたホンダやF1を愛してくれているファンの皆さまの前でよいレースを見せることができてうれしく思っています」そして、表彰台にはレッドブル・ホンダとしてコンストラクターズトロフィーを受け取るために代表してホンダF1の山本雅史が登壇した。「レッドブルと一緒に2019年から今年までやってきて、これまで2回ほど私を表彰台に送り出してくれました。今回は山本でしたが、前回のトルコGPでの白いカラー、そして、今回のアメリカGPではアキュラのブランドロゴをつけて走ってくれました。そうしたことから、ホンダとレッドブルががっちりと手を組んでいて、レッドブルがホンダに敬意を払ってくれていることをさらに感じました」と田辺豊治は語った。