ホンダF1にとって、2020年のF1世界選手権は開幕戦でPUトラブル発生という最も望まない形でのスタートとなった。2015年にマクラーレンのパートナーとしてF1復帰したホンダはパフォーマンスでも信頼性でもライバルに大きく遅れをとって状態で活動を再開。特に初期のF1パワーユニットは壊れまくっていた。
それでも、2018年にトロロッソとのパートナーシップを開始してからは、翌年のレッドブルとの提携を見据えたある程度の自由な開発とアップグレード投入を許され、信頼性とパフォーマンスは飛躍的に進化。ホンダとしてもHonda Jetのエンジン部門と連携してアキレス腱だったMGU-Hの信頼性問題を克服。2019年には3勝、3回のポールポジションを獲得するパフォーマンスを発揮し、2020年はいよいよ王者メルセデスに挑めるタイミングと期待が寄せられた。しかし、2020年のF1世界選手権が開幕するとメルセデスのF1エンジンが大きな飛躍を遂げていたことが明らかになる。だが、2014年にF1パワーユニットが導入されて以降、チャンピオンチームとして君臨してきたメルセデスのパフォーマンスを追い越すことはそう簡単なことではない。それ以上に問題なのが信頼性トラブルが発生してしまったことだ。新型コロナウイルスの影響によってレース数が定まっていない今季は1戦1戦が非常に重要なシーズンとなる。迎えた開幕戦。マックス・フェルスタッペンは、上位10台の中で唯一ミディアムタイヤというアドバンテージを活かすべく、2番手をキープしながら順調に周回を重ねていく。しかし、11周目に電気系のトラブルが発生し、スローダウン。ピットへマシンを戻したものの、ここでリタイアとなった。そして、レース終盤にはルイス・ハミルトンとの接触によって上位争いから外れてはいたものの、アレクサンダー・アルボンにPUの電気系と思われるトラブルが発生し、レッドブル・ホンダは2台ともリタイアという結果で終えることになった。連戦の短い時間の中で問題解析を行い、可能な限りの対策を施して臨んだ第2戦では、マックス・フェルスタッペンが3位、アレクサンダー・アルボンは4位と結果を残したが、レッドブル・リンクのストレートでのメルセデスのF1エンジンとのパフォーマンス差は歴然だった。そして、第3戦ではレッドブル・ホンダ勢には問題は発生しなかったものの、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーにマシンに2度のPUトラブルが発生。ほぼすべてのコンポーネントを2基目に交換することになった。さらに低・中速サーキットのハンガロリンクではメルセデスのF1エンジンが優れたドライバビリティを持っていることも明らかになった。だが、マックス・フェルスタッペンが2位表彰台を獲得したF1ハンガリーGP後にホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治は「PUとしても最大限のパワーを出しきってサポートできたと考えています」とし、「厳しい状況だった昨日の予選を考慮すれば、このレース結果は喜ぶべきものだと思っています」と素直に喜びを表現した。しかし、ホンダF1にとっての問題は、新型コロナウイルス危機に対応したコスト削減策により、今シーズンのエンジンのアップグレードが不可能であることだ。したがって、より多くのパワーを見つけるには、既存のデータとより良いエンジン調整を介して行う必要がある。「週末は久しぶりにレースが開催されない週末です。次戦のイギリスGPまでの時間を使って、ここまでに発生した問題の解析と再発対応を行うとともに、さらなるパフォーマンスアップを図るべく、HRD-Sakuraおよびミルトンキーンズのメンバーとデータの解析を進めます」と田辺豊治は語る。1週間のインターバルが空けるとシルバーストンでの2戦とF1スペインGPと再び3連戦を迎える。特にシルバーストンは、平均車速の高いコースゆえにエンジンパワーの差が如実に表れる。「この先も簡単なレースになるとは思いませんが、今日の表彰台を弾みとして、いい戦いを見せられればと思います」と田辺豊治は語った。
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