ホンダF1の副テクニカルディレクターを務める本橋正充が、F1ベルギーGPへむけてのパワーユニット面の準備、そして、レース週末での作業を振り勝った。トロロッソ・ホンダにとってF1後半戦のスタートは、チーム、ドライバー、そしてホンダがしっかり噛み合い、ポイント獲得という成果を得た戦いとなった。
3週間のサマーブレイクを終え、F1グランプリは後半戦に入った。その幕開けの舞台は、伝統的で、高速セクションが特徴的なスパ・フランコルシャン。このコースは、ドライバーにとってチャレンジングであるとともに、マシンの総合力が試されるコースとしても名高く、車体、パワーユニットの高いレベルでのバランスが、ラップタイムやレース結果を左右する。チームやドライバーもコメントしている通り、トロロッソ・ホンダにとって、このコースはどちらかというと苦手の部類に入る。グランプリ初日のプラクティスではタイムは伸び悩み、予想通りの苦しい週末になるかと思われた。しかし2日目の予選で、2台は大きくタイムを伸ばし予選11番手、12番手を獲得。プラクティスでのアタックシミュレーションから2秒以上タイムアップを果たしての結果だった。この躍進について、ホンダF1の副テクニカルディレクターを務める本橋正充「ハンガリーGP後のテストで、車体側もだいぶ勘どころをつかんできたというのが反映され、我々もエンジンの使い方として、ここはパワーサーキットなので、性能の出し切りといった部分にトライしました。その成果だと思います」と語る。「勘どころをつかんだことで、路面変化にも対応できるようになりましたし、パワーユニットのメリハリをつけた使い方という部分もうまくいきました。それらが合わさり、予選での好結果につながったのだと思います」ホンダは、シーズン中1周あたりの距離が最長な上に、高速セクションが多く、全開率の高いこのスパ・フランコルシャンに向けて、準備を進めてきた。「今回、特に新しいアイテムの投入というのはありません。パワーユニットの限界値を探って、信頼性とのバランスの上に、もっと使える部分を探ったり試したりしているところです。カナダで新バージョンのパワーユニットを投入して、それ以降トラックサイドでの煮詰めというのを進めてきました。エンジンの美味しいところをどこまで使えるかというような詰めですね。それが今回、このパワーサーキットに間に合ってきた形です。今回は(新たなアイテムは入れていないものの)パフォーマンスは進歩していると思います」と本橋正充は語る。そして、難しいと言われる回生エネルギーの使用戦略(エネルギーマネージメント)については「このコースのエネルギーマネジメントは、配分自体はそんなに難しいわけではないのですが、やはり1周が長いということで、パワーの使い所、抜き所は考えなければいけません。また、どうしてもオー・ルージュや裏のストレートなどの高速セクションに目がいきがちですが、それ以外の、例えば下りの複合コーナーなども路面コンディションの変化などによって、乗り方がだいぶ変わってきます。そういうことに対応していくというのが、ここでのパワーユニットの使い方の難しさです。それら複合コーナーなどにエネルギーを使おうとすると、ストレート分も調整しなければならなくなります。そのバランスというか、いいとこ取りができるポイントを探していく作業を行なっています」と本橋正充は説明した。「決勝レースについては、コースコンディションや、コースレイアウト、あと他車との位置関係で、エネルギーマネジメントやICE自体のパフォーマンスをどうコントロールしていくかがポイントになると思います。このコースは、抜けそうで抜けなかったり、『ここで抜けるの?』というところで抜けたりするんです。それらの情報をチームと共有しているので、レース中でもメリハリをつけたパワーユニットの使い方を随時指示できるかどうかが、我々にとってのキーポイントです」「予選までの流れもそうですが、ハンガリーGPとその後のテストあたりから、車体側もパワーユニット側もだいぶお互いの勘どころがわかってきました。加えて、シーズン前半、苦しんだときもありましたが、互いのコミュニケーションがだいぶ進み、とてもいい状況になっていて、その流れのまま後半戦のスタートを迎えられていますので、レースに向かってもとてもポジティブです」結果的に、本橋正充の言葉通り、引き続きいい流れのレースが展開された。決勝レース、スタート直後の多重クラッシュを乗り越えたトロロッソ・ホンダの2台はそろって完走を果たし、ピエール・ガスリーは自身とマシンの持てる力を存分に発揮し9位入賞。今シーズン初めて、2戦連続でポイントを獲得した。レース後、ピエール・ガスリーは「苦戦が予想されたこのコースで、ポイントが獲得できてとてもうれしい。ホンダがすばらしい仕事をしてくれたし、週末を通してマシンの感触はよかった」とコメント。後半戦のスタートは、チーム、ドライバー、そしてホンダがしっかり噛み合い、ポイント獲得という成果を得た戦いとなった。
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