ホンダF1が、2019年からレッドブル・レーシングにF1パワーユニットを供給する可能性が高まっている。そこで最も心配なのはマクラーレン・ホンダ時代のような二の舞を踏まないかどうかだ。F1アゼルバイジャンGPの週末、ホンダF1が、2019年以降のF1パワーユニット供給についてレッドブル・レーシングとの交渉を正式に開始したことが明らかになった。その交渉は次戦F1スペインGPでもさらに続けられると報じられている。
ホンダのF1パワーユニットはマクラーレンと組んだ3年間で信頼性とパフォーマンス不足が露呈し、昨シーズン限りでマクラーレンから三行半を突きつけられるかたちで契約を解消した。特にパートナーシップ後半はマクラーレンからの批判は辛辣さを増し、ホンダの評判は著しく低下した。ホンダは、マクラーレンへの“信用”を失うかたちとなった。レッドブル・レーシングも過去にダブルタイトルを獲得した強豪チーム。エンジンパートナーへの批判はマクラーレンに負けないものがある。しかし、2014年にV6ターボパワーユニットが導入されて以降、ルノーのエンジンのパフォーマンスと信頼性の低さは顕著となり、一旦レッドブル・レーシングとトロロッソは2015年シーズン限りで契約を打ち切ることを決定している。しかし、レッドブル・レーシングにエンジンを供給するメーカーは現れず、ルノーのエンジンに“タグホイヤー”のバッチをつけて搭載することで決着。一方、トロロッソは1年間、フェラーリの1年落ちのパワーユニットを搭載することを強いられている。さらに2016年にルノーがワークス復帰して以降、レッドブル・レーシングはカスタマー待遇となったことでその関係はさらに冷え切っている。今年、ホンダはトロロッソとのパートナーシップを開始し、良好な関係を築いている。中堅チームのトロロッソは、ホンダとのワークス関係を“これまでで最高の状況”だと喜んでおり、カスタマーではできなかった完全な設計プロセスにおいてホンダと協力体制を築けていることで、2019年F1マシンの開発においてモチベーションを高めている。だが、トロロッソはレッドブルの姉妹チーム。当然、ワークス契約を締結してはいるものの、ヒエラルキーでは2番手となるだろう。チーム代表のフランツ・トストも「それはレッドブル次第だ。我々は彼らの決定には関係していない」と覚悟はできているようだ。レッドブル・ホンダの提携は、マクラーレン・ホンダのようにホンダが資金を投入することはないと考えられているが、エンジンパートナー以上のより強力な提携になる可能性があると考えている。当然、レッドブル・レーシングは“勝てるパワーユニット”を求めてくるはずだ。しかも、F1復帰となったマクラーレン時代とは異なり、ホンダはすでに復帰後4シーズン目に突入しており、即戦力となるパワーユニットが求められる。トロロッソ・ホンダとしての初のプレシーズンテストではホンダのF1パワーユニットは見違えるほどの信頼性を発揮し、今シーズンへの期待をもたせたが、開幕戦ではMGU-Hの故障が発生。第2戦バーレーンGPこそピエール・ガスリーが4位入賞を果たしたものの、続く2戦では中団ではなく、下位グループに属していた。F1の競技規則では、F1のパワーユニット製造者は来シーズンにどのチームにパワーユニットを供給するかについて5月15日以前までにFIA(国際自動車連盟)に通知する必要があると記されているが、全パワーユニット製造者とFIAの間で書面で合意されれば、その最終期限を延長することができる。しかし、ルノーは、レッドブル・レーシングに2019年のF1エンジン契約に関してF1の競技規則で定められた5月15日という最終期限を延長する意向はないと明言。ホンダとルノーの両社は、6月のF1カナダGPでアップグレードの投入を予定しており、両方のエンジンが2019年にどれくらい競争力を発揮できるかが明確になるとみられているが、レッドブル・レーシングは、それらのデータを分析して決断を下す余裕はなくなった。レッドブル・レーシングが、ホンダを選んだ場合、それは今後のホンダのパワーユニット計画に対する“信用”で選ぶことになる。ホンダはマクラーレン時代の失敗を繰り返さずにそれに答えることができるのだろうか? 今週末のスペインGPでの交渉に注目が集まる。