メルセデスのF1ドライバーであるルイス・ハミルトンは、レースがまったくないよりはマシではあるが、当面の間、F1が無観客でレースを開催するという見通しは“空虚感”をもたらしていると語る。新型コロナウイルスの世界的な大流行を受け、2020年のF1世界選手権は第10戦までが中止。現時点では7月5日(日)にオーストリアGPでレースを再開することを目指して調整が進められている。
だが、世界中で大規模イベントは禁止・自粛されている。そのため、レースは無観客で行われ、F1はチームメンバーやオフィシャルの数を制限し、“バイオスフィア(生物圏)”を作り出すことを目指している。ルイス・ハミルトンは、グランドスタンドにファンが1人もいない状況でレースをするのは公式テスト以上に違和感を感じるだろうと述べた。「レースを作るのはファンだし、とても空虚な気持ちになる」とルイス・ハミルトンはメルセデスのYouTubeチャンネルで語った。「世界中のどこであろうとファンが多い方が熱気は高まる。だからこそ、シルバーストンやモンツァはあのように素晴らしいんだと思う」 「かなり虚しいけど、レース再開には素晴らしいこともある。今、僕はスポーツを見られずにつらい思いをしている世界中の人々からたくさんのメッセージを受け取っているし、それはスポーツがいかに人々の生活の中で大きな意味を持っているかを表わしていると思う。スポーツはみんなを1つにするとてもエキサイティングで魅惑的なものだ。テレビで見るのがどれほどエキサイティングかはわからないけど、何もないよりはマシだと思う」 「僕たちにとってはテストデーのような感じだ。ある意味テストより酷い。テストでも大勢ではないにしろ、何人かはミニ来てくれるからね。でも、今回の場合は1人も来ない。ただ空っぽの席の前を駆け抜けるだけだ」「それでもレースはレースだ。マシンのポテンシャルをフルに発揮した人はまだいないと思うし、また乗るのが楽しみだ。乗れないのは寂しくてたまらない」 ルイス・ハミルトンは、ロックダウン中にトレーニングやフランス語の勉強をして過ごし、F1ドライバー仲間のピエール・ガスリーやシャルル・ルクレールとゲームで遊んだこともあったという。ルイス・ハミルトンは、自粛中にポジティブな点もあったとし、この中断期間をF1での長期的な未来にポジティブな影響を与えられるように生かしていきたいと述べた。「僕は普段はとても物静かな人間だし、自分の時間を楽しんでいる。そのような時間を持つことは誰にとても重要なことだと思う」とルイス・ハミルトンは語る。「あまり邪魔されずにそういう時間を持てたのは良いことだった。でも、チームや友人に会えないのはみんなと同じように寂しい」 「この5年間で何度か1年休養するのが自分の心と体にとって良いことかもしれないと思ったこともある。でも、全盛期のアスリートが1年休養することは良いことだと思わない。テクノロジーは急速に進むものだし、僕たちはマシンを完全に理解して開発を続けなければならないのでサバティカルを取るという選択肢にない」 「でも、今の僕たちは一時的なサバティカルを与えられたようなものだ。僕はそれを楽しんでいるし、今まで以上にフレッシュだしヘルシーな気分だ。みんなのための闘いによって、思考はクリアになった。日によってはどんよりすることもあるけど、それ以外の日はポジティブに過ごしている。それが本当に重要なことだ。集中して、以前は時間がなくてできなかったことを楽しんで、この時間を無駄にしないようにする。時間を無駄にしないことが重要だ」