F1ブラジルGP決勝の生中継中、ガブリエル・ボルトレトの家族を映した際に、元トロロッソ代表フランツ・トストが不適切なコメントを発したとして、オーストリア放送協会(ORF)が公式謝罪を行った。発言は即座にオンラインで拡散し、ファンや関係者から批判が殺到していた。地元インテルラゴスでの初ホームGPで、ボルトレトはオープニングラップでクラッシュ。スプリントでの57Gアクシデントに続く週末2度目の衝撃となり、サウバーのガレージ内には重苦しい空気が漂っていた。
そんな中、家族の映像を切り替えた直後に飛び出したトストの発言が問題視され、ORFが11月12日に謝罪声明を発表した。ブラジルGP生中継での“不適切発言”とはクラッシュ後、ボルトレトの母や家族の悲痛な表情が映し出された際、ORFの共同解説を務めたフランツ・トストは次のようにコメントしたと報じられている。「彼はまだ学習段階にいる。母親たちはあんな間抜けな顔をする必要はない、まったく普通のことだ」(Krone経由)この発言は放送直後にSNSで拡散し、批判が集中。若いルーキーの地元レースという背景もあり、「家族への敬意を欠いている」として反発が広がった。これを受け、ORFは次のような声明を発表して謝罪した。「ブラジルGPの生中継における序盤の混乱の中で、ガブリエル・ボルトレトの母親と家族が画面に映った場面で、不適切な発言が行われました。選ばれた言葉はまったく相応しくなく、再発防止に向けた適切な措置を講じます」(ドイツ語声明の翻訳)ボルトレト「キャリアで最も厳しい週末の一つ」サウバーのルーキー、ガブリエル・ボルトレトにとって、母国インテルラゴスは本来“夢の舞台”となるはずだった。しかし、実際は週末を通して試練の連続となった。スプリントではアレックス・アルボンのスリップストリームで動きが乱れ、ターン1手前で57Gの大クラッシュ。マシン修復が間に合わず、予選を欠場した。決勝は最後尾スタートから2つ順位を上げた直後、ランス・ストロールのアストンマーティンと接触し万事休す。1周も走れずレースを終えることになった。レース後、ボルトレトはF1.comに次のように語っている。「初めてのホームレースだから、いい走りがしたい、せめてレースがしたいと思っていたのに…本当に悔しい。キャリアでも最も厳しい週末のひとつだった。家族もファンもチームも来てくれていたし、衝撃の大きさも過去最大級だった」それでもインテルラゴスのスタンドはブラジル国旗とボルトレトの名前が掲げられ、ルーキーへの声援は最後まで途切れなかった。チームとしては、ニコ・ヒュルケンベルグが9位入賞を果たし、貴重なポイントを持ち帰っている。今回の騒動が示す“放送倫理”と“ルーキー保護”の難しさ今回の問題は、単なる“失言”ではなく、F1中継における放送倫理と人権意識のズレを浮き彫りにした。■ 家族の表情も放送対象になるF1中継の難しさ昨今、ドライバー家族のガレージ映像は演出として多用されるが、その一挙手一投足が世界中で即時拡散される。放送側はより一層デリケートな配慮が求められている。■ ルーキーが背負う“地元GPの重圧”初ホームレース、連日のクラッシュ、決勝1周リタイア。感情的な場面で当事者の家族を揶揄するようなコメントが批判されたのは当然だと言える。■ ORFが迅速に謝罪・再発防止を宣言メディアが即座に責任を認めた点は評価されるべきだが、国際放送における「言葉の重さ」を示すケースとなった。若き“地元ヒーロー”への試練と、放送側に問われる責任ガブリエル・ボルトレトの地元GPは、残酷な形で幕を閉じた。しかし、彼の落ち着いた対応と家族の支えは、多くのファンの心を動かした。一方、放送側にはより慎重な姿勢と、国際基準の倫理観が改めて求められる。サウバーは残る3戦で巻き返しを図る構えだ。ボルトレトにとっても、この苦い経験は今後のキャリアで必ず強さに変わるはずだ。
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