FIA(国際自動車連盟)が検討していたF1エンジンの評価方式について、より複雑な基準がメーカー側の反対によって見送られていたことが明らかになった。現在導入が進められている追加開発機会(ADUO)は、遅れているメーカーに開発余地を与える制度だが、その評価は極めてシンプルな形にとどまる見通しだ。
The Raceのジョン・ノーブルによると、FIAは2025年の段階で、エンジン性能を単純な出力だけでなく複数の要素を組み合わせて評価する案を提示していたが、パワーユニットメーカー側がこれを拒否していた。メーカーが拒否した“複雑な評価基準”FIAは2025年の時点で、単純な出力比較ではなく、より多面的な要素を含めた評価方法をメーカー側に提案していた。具体的には、ターボの圧力やサイズ、プレナム温度の運用といった設計・運用要素を含めてエンジン性能を評価する案である。ニコラス・トンバジスはこの議論について次のように説明している。「エンジンのパワーが単一の数値ではないことは明らかに分かっていた。我々は2025年春にメーカーとかなり長い議論を行った」「ターボ圧やターボ径、プレナム温度の運用などを考慮するかどうかを提案した」しかし、この案に対してメーカー側は明確に反対した。「当時のパワーユニットメーカーの共通した立場は“シンプルにすべきだ”というものだった。そのため、内燃エンジンの馬力という現在の指標が最初から受け入れられていた」結果として、現在のADUO評価はICE出力のみを基準とするシンプルな形に落ち着いている。フェラーリの設計思想は評価対象外一方で、現場ではこのシンプルな基準に対する疑問も出ている。例えば、フェラーリのようにドライバビリティを優先して小型ターボを採用するケースや、排気の流れを利用したエキゾースト設計などは、純粋な出力値を犠牲にする可能性がある。ある関係者は次のように指摘する。「パワーが不足しているのはエンジンではない。ラップタイムを最適化するための車両側の搭載方法がエンジン性能を制約している」こうした要素を考慮しなければ、公平な比較にならないという見方もあるが、現時点でFIAはこれらを評価対象に含めない方針を維持している。評価の難しさとFIAの本音レッドブルF1のローラン・メキースも、この評価作業の難しさを認めている。「誰がどの位置にいるのかを評価するのは非常に難しい。ICEとバッテリーの関係や、ターボサイズ、排気の使い方など、複雑な要素が絡んでいる」ただしトンバジス自身は、むしろ評価をより複雑にする余地があると考えている。「個人的にはパラメータをもっと複雑にすることには前向きだ。ただし、その議論は1年以上前に行われ、結論は出ている」つまり現在のシンプルな方式は“最適解”ではなく、あくまでメーカー間の合意による妥協点であることが示唆されている。ADUOは勢力図を変えるのかADUOは遅れているメーカーに追加開発の機会を与える仕組みとして注目されているが、その影響についてトンバジスは冷静な見方を示している。「ADUOはパフォーマンス調整(BOP)のようなものではない。燃料流量を増やしたり、重量を変えたりするわけではない」「我々が与えるのは開発機会が少し増えるということだ。それは重要だが、最終的には最高のエンジンを作らなければ勝てない」つまり、ADUOはあくまで“追いつくための余地”を広げる制度であり、勢力図を劇的に変える仕組みではないという位置付けだ。最終的なエンジン序列は数週間以内に発表される見通しであり、その結果は2026年の開発競争の方向性を大きく左右することになる。