FIAとF1関係者によるレギュレーション見直し会議が4月9日にスタートするが、今週中に具体的な変更が決まる可能性は低い。これはあくまで議論の第一段階に過ぎず、実際の決定は後日の会合に持ち越される見通しだ。今回の議題は、2026年F1レギュレーションがもたらした問題点の洗い出しと改善案の検討にある。安全性や競技性に関わる重要テーマが含まれているものの、拙速な結論は避けられる方向だ。
決定は4月20日以降 ミーティングは段階的プロセス今回の4月9日の会議は、FIAのニコラス・トンバジス主導のもと、各チームおよびパワーユニットメーカーの技術責任者が参加するオンライン形式で行われる。ここではテストおよび開幕3戦から得られたデータをもとに改善案が議論されるが、最終決定は4月20日に予定されているチーム代表会議に委ねられる。さらに、その内容は世界モータースポーツ評議会の承認を経て正式決定となるため、仮に合意に至った場合でも即時導入とはならず、最短でもマイアミGPが初適用のタイミングとなる可能性がある。安全性が議論を加速 ベアマンの事故が転機に議論を加速させている最大の要因は、安全性への懸念だ。日本GPで発生したオリバー・ベアマンのクラッシュは、エネルギー回生中のマシンとデプロイ中のマシンの速度差が引き起こすリスクを明確に示した事例となった。この「速度差問題」は以前から指摘されていたが、実際の事故によって現実的な危険として認識されることになった。ステラ「問題は想定内」 解決は単純ではないマクラーレンのアンドレア・ステラは、この速度差の問題について「驚きではない」と明言している。「片方のマシンがリフトしている、あるいはスーパークリップ状態にある一方で、もう一方がデプロイしている状況では、これほど大きな速度差が生じ得るというのは予想されていたことだ」「これはすでにテストの段階から議題に上がっていた。2026年レギュレーションで改善すべき項目としてFIAのアジェンダに含まれている。我々は問題が起きてから対応するのではなく、先に手を打つ必要がある」さらにステラは、単純な解決策では不十分であるとの見方も示した。「データを見て判断する必要がある。チームはそれぞれの状況を共有しなければならない。350kWのスーパークリップ導入は、リフト・アンド・コーストを減らすための案だが、それだけで解決するとは限らない」「単純な答えはない。複数の要素を組み合わせる必要があるだろう」“拙速な改定”は否定 データ蓄積を重視一方で、ハースF1チーム代表の小松礼雄は、冷静な判断の必要性を強調している。「我々はスポーティングと安全性を慎重に切り分ける必要があります。安全性は最優先であるべきですが、それを理由に拙速な判断をするべきではありません」「まだ3戦を終えた段階で、十分なデータが揃っているとは言えません。F1コミュニティ全体で冷静に議論することが重要です」焦点は“速度差”とエネルギー運用現在の議論の中心にあるのは、ストレート終盤で発生する極端な速度差だ。特に問題視されているのが、エネルギー残量の差によって発生する最大50km/h規模の速度差であり、ドライバーからも強い懸念が示されている。また、これに関連して以下のような改善案が検討されている。■ スーパークリップ出力を250kWから350kWへ引き上げ■ リフト・アンド・コーストの発生抑制■ 予選におけるエネルギー回生制限の見直し予選フォーマットも見直し対象にもう一つの重要テーマが、予選のあり方だ。現在の2026年仕様では、エネルギー管理が大きな要素となり、「純粋なパフォーマンス勝負」としての性質が薄れているとの指摘がある。鈴鹿ではすでにエネルギー回生上限を9.0MJから8.0MJへ引き下げる暫定措置が取られており、さらなる調整も議論されている。短期修正と長期改革 二段構えの議論今回の会議は、短期的な修正と中長期的な改革の両面で進められている。マイアミGPに向けた即効性のある対策と並行して、2027年に向けたより抜本的な見直しも視野に入っている。ただし、後者については各チームやメーカーの利害が複雑に絡むため、合意形成は容易ではないと見られている。結論として、今週の会議は「決定の場」ではなく「方向性を定める場」であり、実際のレギュレーション変更は段階的に進められることになる。
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