FIA(国際自動車連盟)は、2024年シーズンにおける複数のF1チームがコストキャップ(支出制限)規則に違反しているとの噂が広まる中、声明を発表した。メキシコシティGPのパドックでは、「小規模な手続き上の違反」と「より深刻とされる違反」の2件があるとの憶測が飛び交っている。コストキャップ制度は2021年に導入され、チームが1年間に支出できる金額の上限を定めている。
ベース額は1億3500万ドルとされているが、インフレ調整を加えると実際の上限はおよそ1億5000万〜1億6000万ドルに達する。この制限にはスポーツおよび技術的領域、つまりパフォーマンス関連の支出のみが含まれ、ドライバーと上位3名の高給スタッフの報酬は対象外だ。マーケティング費用などもキャップ外の扱いとなる。FIAは声明の中で、次のように説明している。「FIAのコストキャップ管理部門は、現在チームおよびパワーユニットメーカーから提出された2024年の申請書類の審査を最終段階で進めています。その結果はまもなく発表される予定です」「特定のチームまたはパワーユニットメーカーの個別申請について、FIAはコメントを行いません。すべての申請の審査が完了し最終的に確定した時点で、レビュー結果を公表します」過去にも同様の事例があり、2021年シーズン分の監査ではレッドブルとアストンマーティンが違反と認定された。後者は手続き上の違反により45万ドルの罰金を科され、一方のレッドブルは「軽微な金銭的超過」(コストキャップの5%未満)として700万ドルの罰金と、風洞テストおよびCFD(数値流体力学)シミュレーション時間の10%削減という制裁を受けた。再び“コストキャップの影”がF1を覆う今回のFIA声明は、具体的な違反チーム名を挙げない中立的なものだが、タイミングは非常に示唆的だ。過去のレッドブルやアストンマーティンの事例が示すように、わずかな超過でも厳しい制裁が科される可能性があるため、各チームの関係者は神経を尖らせている。特に、今季は多くのチームが開発競争を激化させており、アップグレード頻度の多い上位勢ほど支出圧力が大きいとみられている。もし“重大な違反”が存在するなら、コンストラクターズ選手権の勢力図に影響を及ぼす可能性もある。FIAが「まもなく結果を発表する」と明言したことから、正式な認定と処分発表はメキシコGP〜ラスベガスGPの間に行われる見通しだ。再びF1を揺るがす“コストキャップ問題”が、今シーズン終盤戦の焦点のひとつとなりそうだ。