F1とFIA(国際自動車連盟)との間で続く言葉の攻防で緊張が高まる中、FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は、F1のボスたちに「チャンピオンシップは我々のものであり、我々はそれを貸し出しているだけだ」と念を押した。F1世界選手権にはある意味で2人のボスがいる。オトマー・サフナウアーの言葉を借りれば「2人の教皇」がいる。
モータースポーツの統括団体であるFIAと2017年初めにフォーミュラ・ワン・グループの経営権を買い取り、シリーズの権利を所有するリバティ・メディアだ。FIAの任務が安全性の確保とルールの施行であるのに対し、F1グループはすべての商業的な事柄を担当している。しかし、今、両者はスポーツに関わるほぼすべてのことをめぐって対立している。昨シーズン、F1チームのボスがポーパシングへの介入めぐってFIAと衝突し、モータースポーツ統括団体が2023年のルール変更を強行すると同時に、F1チームが予算上限の引き上げを要求したことから緊張が高まり始めた。それはグランプリウィークエンドにも続き、F1イタリアGPの赤旗に対するFIAの対応に感銘を受けず、2レース後の日本GPではコース上に回収車両が侵入し、まさに同じサーキットで起きたジュール・ビアンキの2014年の悲劇を思い起こさせることになった。最近では、11番目のチームを迎え入れたいというFIAの意向をめぐって、モハメド・ビン・スライエムがアンドレッティのグリッド参加を推し進め、アンドレッティの計画に参加したゼネラルモーターズのような大手自動車メーカーに「いったいどうやってノーと言えるのか」と問いかけたことで衝突が起きている。チーム、そしてF1全体は、このスポーツを10チームに抑えたいと考えており、まったく熱心ではない。そのような議論が続く中、サウジアラビアの政府系ファンドが200億ドルでリバティ・メディアからのF1買収に興味を示しているというBloombergの記事が話題になった。しかし、F1のボスたちはその提案を拒否した。これを知ったモハメド・ビン・スライエムは「F1につけられた200億ドルという誇張された値札の疑い」に疑問を呈し、その発言はF1首脳陣を怒らせ、「権限の範囲を超えた」との抗議文を出す事態となった。しかし、モハメド・ビン・スライエム、あるいは少なくともFIAは、リバティ・メディアが売却するかどうかについて発言権を持っており、買い手が誰であるかを決定することもできる。Auto Motor und Sportによると「FIAは商業的な決定には干渉できないが、F1経営陣にとってこの問題は言うほど単純ではない」と伝えた。「もし権利が売却されれば、いわゆる『ドン・キング条項』が発効ことになる。この契約の特別条項は、伝説的なボクシングのプロモーターにちなんで名付けられたもので、所有者の変更があり得る場合には、常にFIAに拒否権が与えられている」簡単に言えば、FIAは2000年に100年契約でバーニー・エクレストンに『F1』の使用権を譲渡し、元F1最高責任者はその後、それをリバティ・メディアに売却しているからだ。モハメド・ビン・スライエムは「チャンピオンシップは我々のものであり、我々はそれを貸し出しているだけだ」と明言している。「今のところ、売却の可能性があるという噂があるだけだ。しかし、FIAは発言権を持ち、助言を与えることができるはずだ」