フェラーリは2026年F1ハンガリーGPで、メルセデスが予選で使用しているエネルギーマネジメント手法のテストを実施していたことが明らかになった。この手法は、予選ラップのフィニッシュライン直前で意図的にアクセルを戻すことで、バッテリー出力を最大限維持したままラインを通過する“リフトオフ・トリック”と呼ばれるものだ。
わずか0.05秒程度のタイム短縮効果とされるが、僅差で争われる現在のF1ではポールポジションを左右する可能性もあり、フェラーリは今後の実戦投入を視野に検証を進めている。メルセデスが編み出した予選用エネルギーマネジメントこのテクニックは、メルセデスが2026年シーズン中盤から完成させたものだ。F1では予選ラップ終了時、バッテリー残量がゼロに近づくと電力供給を一気に止めることはできず、FIAが定める「ランプダウンレート」に従って毎秒50kW以上の段階的な出力低下を行わなければならない。そのため通常はフィニッシュライン手前で350kWの最大出力を維持できなくなる。しかしレギュレーションには「バッテリー残量がゼロになる前にドライバーがアクセルを戻した場合、このランプダウンレートは適用されない」という例外規定が存在する。メルセデスはこの規則を活用し、ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリにイヤホンから警告音を送り、決められたタイミングでアクセルを戻させるシステムを完成させた。これによりフィニッシュラインまで最大350kWの電力を維持でき、アントネッリはイギリスGPとベルギーGPでポールポジション獲得にこの手法を活用した。なお、シーズン序盤にはMGU-Kを緊急停止させる別の方法が使われていたが、日本GP後にFIAが禁止。その後メルセデスは現在のリフトオフ方式へ切り替えている。フェラーリもハンガリーGPで実走テストライバルチームもこの手法に注目しており、フェラーリはハンガリーGP金曜フリー走行でシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンの両名が同様の手法を試した。テレメトリーデータでは、ルクレールがフィニッシュライン直前でアクセルを戻し、そのまま速度を維持してラインを通過する様子が確認されている。両ドライバーは金曜走行でメリットを評価したが、最終的にフェラーリは予選でこの戦略を採用しなかった。ハンガロリンクは回生量が多く、最終コーナーからフィニッシュラインまでの距離も長いため、もともと電力に余裕がある「エネルギーリッチ」なサーキットだ。このため、このトリックによるタイム短縮効果は限定的と判断された。土曜日の予選では通常どおり全開のままフィニッシュラインを通過する設定に戻されていた。わずか0.05秒でも価値は大きいこのテクニックで得られるアドバンテージは約0.05秒とされる。一見すると小さな差だが、現在のF1では予選順位が100分の1秒単位で決まるケースも珍しくない。実際、ハンガリーGPではハミルトンはオスカー・ピアストリ妨害による3グリッド降格処分を受ける前、ランド・ノリスのポールタイムまでわずか0.012秒差だった。一方で、この手法には重大なリスクもある。ドライバーがバッテリー残量ゼロになる前にアクセルを戻せなかった場合、ランプダウン規定違反となり失格処分を受ける可能性がある。そのためチームはサーキット特性や電力消費量、得られるタイム短縮効果を総合的に評価し、リスクに見合うかどうかをレースごとに判断している。メルセデス自身もハンガリーGPではこの手法を使用しておらず、フェラーリも今回のテスト結果を踏まえ、より効果が期待できる高速サーキットでの本格投入を検討していくとみられる。