フェラーリは2026年シーズン、F1のコストキャップ(予算上限)制度下にありながら、ライバルを上回るハイペースでアップデートを投入し続けている。その背景には、長年にわたって築き上げたイタリア国内のサプライチェーンがあり、メルセデスをはじめとするライバルには真似しにくい構造的な優位性が存在するとみられている。
メルセデスのトト・ヴォルフ代表は、フェラーリが大型アップグレードを立て続けに投入していることについて、「このままでは資金が尽きるはずだ」と皮肉を交えながら疑問を呈した。しかし実際には、フェラーリはコストキャップ制度の範囲内でも開発を継続できるだけの「見えない武器」を持っているようだ。イタリア拠点ならではの“コストキャップボーナス”2026年のF1ではコストキャップが2億1500万ドルに設定されており、各チームは限られた予算内で開発競争を戦っている。ヴォルフ代表はイギリスGPで、「フェラーリがこれほど頻繁にアップデートを投入できることには少し驚いている」と語り、「彼らもそろそろ資金が尽きるはずだ」と発言。これに対しフェラーリ代表のフレデリック・バスールは「冗談だ」と一蹴していた。その理由について、イタリアの専門メディア『Formula Technica』は、フェラーリが持つサプライチェーンの優位性を挙げている。現在のF1チームの多くはイギリスの「モータースポーツ・バレー」に本拠地を置いており、メルセデス、レッドブル・レーシング、マクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌ、ハース、アストンマーティンなどは、同じサプライヤーや加工業者を巡って競争している。一方、イタリアを拠点とするフェラーリは事情が異なる。国内で直接競合するF1チームはレーシングブルズのみであり、多くの部品メーカーや加工会社を比較的余裕を持って活用できる環境にある。その結果、部品価格が抑えられるだけでなく、加工待ちや輸送待ちの時間も短縮されるため、新パーツをより短期間かつ低コストで完成させることが可能になる。つまり、同じアップグレードを製作しても、フェラーリはライバルより少ない予算で完成させられるケースが多く、コストキャップ制度の中ではこれ自体が大きなアドバンテージとなる。数十年かけて築いた供給網が武器フェラーリは数十年にわたりイタリア国内のサプライヤーや協力企業とのネットワークを構築してきた。設計データの受け渡しから試作品の製作、加工、品質確認までを効率的に行える体制が整っており、アップデート部品を短期間でサーキットへ投入できる。こうした外部協力会社との連携によって、自社設備だけに頼ることなく開発を進められるため、時間とコストの両方を削減できることが大きな強みとなっている。その成果は2026年シーズンにも表れており、フェラーリはマイアミGPで大型空力アップデートを投入し、スペインGPではさらに改良型パッケージを導入。ベルギーGPでは新仕様のリアウイングや排気システム、オランダGPでは空力アップデートとADUO開発トークンを活用した改良が予定されるなど、積極的な開発を続けている。対照的にメルセデスの本格的なアップグレードはカナダGPが中心で、その後は慎重な開発方針を採っている。ウィリアムズ代表も「トップチームとの差」を説明ウィリアムズのジェームス・ボウルズ代表も、トップチームとの差は単純な予算額ではないと説明している。ボウルズ代表によれば、メルセデスは約12年かけて優秀なサプライヤーとの関係を築き上げ、必要な部品を適切なタイミングで供給できる生産体制を完成させた。一方のウィリアムズは、資金不足もあって十分な外部サプライネットワークを構築できず、同じ部品を製作するにも時間やコストが余計にかかってしまうという。ボウルズ代表は「メルセデスには12年間かけて築いた供給網がある。フェラーリも同じだ。トップチームは皆、そのような効率的なプロセスを持っている」と説明。「我々はそのレベルに到達する道筋を作らなければならない」と語っている。2026年は新レギュレーション初年度であり、開発競争がそのまま勢力図を左右している。コストキャップは各チームの支出額を制限する制度ではあるものの、長年かけて築いた供給網や生産効率まで平等にするものではない。フェラーリが見せる積極的なアップデート攻勢は、こうした"見えない資産"が大きく支えていると言えそうだ。
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