スクーデリア・の2026年F1マシン、SF-26は、バルセロナでのシェイクダウンを経て、次なる検証の舞台となるバーレーンを待つ段階にある。外観上は大きな変化を誇示していないが、マラネロでは実走行データと風洞、シミュレーターとの相関が確認され、マシンの基礎性能に対する手応えが着実に積み重なっている。
その中で注目を集めているのが、フェラーリがSF-26でSダクトを採用しなかったという技術的判断だ。かつて有効な武器として機能していたデバイスを、なぜ今になって捨てたのか。その背景には、2026年レギュレーションを見据えた冷却思想の転換と、より先を見据えた開発戦略がある。バルセロナでの走行後、ゲスティオーネ・スポルティーバではロイック・セラ率いる技術陣が、SF-26の挙動を細かく分析している。サキールで行われる最初のセッションに向けては、すでに最初のアップデートパッケージが準備されており、開幕前から計画的な開発サイクルが進められている。ルイス・ハミルトンは、各チームが任意で3日間のみ走行可能だった5日間のカタルーニャ走行を、総合トップタイムで終えた。ただし、フェラーリがスペインで追い求めていたのはタイムそのものではない。目的は、パワーユニットとシャシーの統合における挙動を把握し、マシン全体の理解を深めることだった。その成果として、空力部門は実走行と風洞実験の間に良好な相関を確認している。さらに、そのデータはシミュレーターにも反映され、ドライバーが感じるフィードバックは、バルセロナでの実走行により近いものへと改善された。これは、今後の開発スピードと精度を左右する、極めて重要な収穫だ。Sダクトを捨てたフェラーリの選択SF-26は、2026年型マシンの中で唯一、非常に小型で三角形状のエアボックスを採用して登場した。この特徴は、パワーユニットの冷却システムの大部分をサイドポッド内部に集約する設計思想と深く結びついている。ラジエーターの開口部は三角形で、下部に設けられた縦スリットは、あくまで必要な空気流量を確保するためのものに過ぎない。取材によれば、フェラーリはSF-23で導入し、SF-24でも継続して使用していたSダクトを、SF-26では採用していない。Sダクトは、サイドポッド下部のえぐれた空間への空気の充填を改善し、フロアに向かう流れの質を高める役割を果たしていた。また、サイドポッド上部へ排出される冷却空気は、ボディ形状と組み合わさることで、抵抗を増やさずにダウンフォースを増加させる効果もあった。しかしSF-26では、その役割を別の形で置き換えている。現在は、ヘイローの付け根後方に設けられた排出口が、サイドポッド内部の熱を効率的に引き抜く役割を担っており、Sダクトに頼らない冷却レイアウトが構築されている。冷却思想の転換と今後の進化フェラーリがこの選択を可能にした背景には、内燃エンジンの特性がある。SF-26に搭載されるエンジンは鋼製シリンダーヘッドを採用しており、より高温域での作動が可能だ。この特性により、必要とされる放熱面積をサイズ面でも重量面でも抑えることができ、サイドポッド形状の自由度が高まっている。その結果、今後はさらに引き締まったサイドポッド形状が投入される可能性が高い。冷却を犠牲にすることなくボディワークを攻めることができるため、空力面での伸び代も確保されている。SF-26は、派手な革新よりも、確実な相関と堅実な開発を重視してスタートを切ったマシンだ。Sダクトを捨てた判断は、その象徴とも言える。フェラーリF1が描く2026年の戦い方は、バーレーンでの本格検証を経て、徐々に輪郭を現していくことになりそうだ。