フェラーリは、失望に終わった2025年シーズンに別れを告ぎ、すでに2026年F1という次の戦いを見据えている。レギュレーション刷新という大きな転換点を前に、マラネロは新型マシン「プロジェクト678」に再起のすべてを託した。果たしてフェラーリは、この一台で本当に変わることができるのか。フェラーリが選んだ道は、無難さを排した攻撃的な設計思想だった。空力、サスペンション、タイヤマネジメント、そしてパワーユニットに至るまで、各分野で積み重ねられた技術的判断には明確な意図がある。
失敗に終わった2025年と、避けられない再起への挑戦将来を見据えたとき、ひとつの問いが浮かぶ。跳ね馬は、長年自らを縛ってきた悪循環を断ち切ることができるのか。迫り来るレギュレーション変更は、確かに再起の好機だが、同時に容赦ない試金石でもある。新プロジェクトが誤った方向に進めば、再び不安定さに引き戻される危険性は現実的だ。チーム代表フレデリック・バスールの手腕は、いまだ完全な信頼を勝ち取れていない。ファンが待ち望んできた約束を、少なくとも現時点では十分に果たせていないからだ。勝利のサイクルを動かすには、経営面での安定が不可欠である。他チームが勝利を重ねる姿を眺め続けることは、1929年11月16日、エンツォ・フェラーリ率いるアルファロメオのレーシング部門として誕生したこのチームの本来の姿ではない。2025年の世界選手権は、チームの脆さを改めて露呈させた。問題を抱えたマシン、不適切なコミュニケーション、そしてサーキットに広がる失望。技術以前に、感情面での亀裂が大きかった。ルイス・ハミルトンは環境に適応できず、心理的にも肉体的にも深い落ち込みに陥った。一方、シャルル・ルクレールは懸命にチームを支えたが、理想と現実の乖離に対する失望がなかったわけではない。白紙から始まる2026年と、マラネロから聞こえる声新レギュレーションはゼロからの再出発を可能にする。白紙の状態で正しい設計を描ければ、期待に応えるプロジェクトを生み出すことは十分に可能だ。間もなく、フェラーリは最初のシェイクダウンを迎えるが、バルセロナでのテストは非公開となるため、実像が見えるのはバーレーンを待つ必要がある。では、その間にマラネロから何が伝わってきているのか。アウトウォッシュと動的キャンバー 回復を狙う空力と車体設計複数のF1技術者との意見交換から、車体形状が空力マネジメントにおいて極めて重要になるという認識が確認された。フロントウイングは空力作業の出発点として重要だが、実際に大きな仕事が集中するのはサイドポッド周辺だ。ここで将来のマシンに必要な渦構造を最適化することが鍵となる。フェラーリはこの領域に集中的に取り組み、車両全体の効率を最大化するための狙いを持ったコンセプトを練り上げてきた。このエリアは、FIA規則による空力的な制約を部分的に補うアウトウォッシュ効果を生み出す上で決定的だと見なされている。アンダーカット周辺も同様で、局所的な高圧を生み、流れを外側へと押し出す役割を担う。フロントサスペンションについても注目点がある。車両ダイナミクス部門は、上側ウィッシュボーンの最初のリンクに制御されたフレックスを持たせるコンセプトを綿密に研究してきた。これにより、サスペンション全体の剛性が状況に応じて変化し、特定の速度域でキャンバー回復量を動的に変化させることが狙いだ。こうしたパラメータ管理により、タイヤ挙動に応じたサスペンション制御が可能となり、特定条件下でのグリップと安定性を最適化できる。キャンバー角の設定は常に相反する要素の妥協点であり、剛性、異方性フレックス、変動荷重の管理が複雑に絡み合う。フェラーリは、この作業が実効性を示すことを期待している。ロイック・セラタイヤとパワーユニット 678の中核を成す二本柱マラネロが特に力を注いできた残るテーマは、タイヤとエンジンだ。近年のフェラーリは、コンパウンドを最大限に活かし切れない傾向が続いており、2026年に仕様が変わるタイヤをどう使いこなすかが、マシンの競争力を大きく左右する。技術責任者ロイック・セラは、この特性を新型マシンに必須の要件として強く押し出してきた。もうひとつの大きな柱がパワーユニットである。メルセデスが圧縮比で優位に立つ可能性は語られているものの、マラネロでは内燃機関とエネルギー回生を担うハイブリッドシステムの双方において、イタリア製ユニットへの強い自信があると伝えられている。最終的に、セラはプロジェクト678に対して極めて攻撃的なアプローチを選択した。無難な選択が良いマシンを生むことはあっても、勝てるマシンにはならない。勝利という言葉が深く刻まれたフェラーリにとって、進むべき道はこれしかなかったという判断だ。明確な構想と、残された最大の課題本稿は、フェラーリがすでに世界選手権を制した、あるいは当然の優勝候補だと主張するものではない。ここで整理した情報は、新型イタリアンマシンについて理解を深めるための材料に過ぎない。バルセロナ、そしてバーレーンでのプレシーズンテストで実際に走るまでは、技術者やエンジニアが抱く好感触が現実の結果として裏付けられることはない。誤差の余地が小さければ小さいほど、パフォーマンスは高まる。人は変わっていないのだから結果も変わらない、という声は根強い。フェラーリは、その論理を否定し、新たな規則の時代に主役となることを目指している。2025年に別れを告げ、2026年へ。答えは、まもなくサーキットで示される。
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