フェラーリの2022年F1マシン『F1-75』は、これまで発表されたマシンには見られない驚きの独創的な形状のサイドポットが備えられている。カルロス・サインツは、発表前にフェラーリ F1-75が 「F1-75はこれまで発表されたどのマシンとも異なる」と語っていた。そして、2月17日(木)に発表されたF1-75ではその意味が明確になった。
スリムなフロントもさることながら、サイドポッドは非常に独創的な形状をしており、フェラーリが新レギュレーションをどのように解釈しているかが表れている。これまで発表されたマシンでは、ラジエーターの配置にとってサイドポッドから後部をどのようにまとめているかで多様性が見られた。サイドポッド周りの気流を加速させて、ディフューザーに可能な限り高速で到達するようにするためには2つの主要なルートがある。1つ目は、サイドポッドをアンダーカットし、正面からに見たときに逆S字型にスカラップアウトすることだ。これにより、空気圧が変化し、流れが加速する。2つ目は、サイドポッドのプロファイルを急激に下げることだ(ハイエントリー/ハイエントリーローバックスタイル)。上部に配置してアンダーカットを鋭くしたもののコークボトルを捨てたアストンマーティン、エンジンカバー部に配置してタイトなコークボトル形状を実現しながらも、アンダカットを捨てたマクラーレンなど、メルセデス勢は新しい技術規則に沿った冷却システムの配置に苦悩していることがわかった。だが、フェラーリ F1-75のアプローチは別次元だ。サイドから見れば、綺麗なハイエントリー/ローバックのスタイルで、リアもタイトに絞られたコークボトル形状をしている。最も特徴的なのはサイドポッドだ。斜め横から見ると、ラジエーターの吸気口はサイドに向かって丸みを帯びた形状のボディワークに包まれて横方向にコンパクトに開けられている。まるで横向きにも吸気口がついているかのようだ。驚きは斜め上から見た形状だ。まるでサイドポッドの上部に穴があけられたように窪んでいる。そして、そこにはほぼ水平に配置されたラジエーターの排気ルーバーが効率的に並べられている。斜め後ろから見ると、その美しい曲線美がよく分かる。ルーバーからこの窪みに流れた空気がボディワークの役割を果たすことで上面のドラッグは軽減されるはずだ。2022年の技術規則では、側面衝撃構造の上部構造と下部構造の位置が厳しく規定され、下部構造の高さは最低でも100mmの位置になくてはならないとされている。また、2つの側面衝撃構造は、ボディワークで完全に囲まれている必要があると規定されている。フェラーリは、その規定をうまく解釈し、マシンの中心に水平にラジエーターを配置して、アンダーカット、ハイエントリー/ローバック、コークボトル形状のすべてをクリアしている。これまで新車発表ではファンをある意味ガッカリさせてきたフェラーリ。だが、F1-75は非常に美しい。「美しいマシンは速い」という格言が当てはまるかどうか期待がもてる一台だ。
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