フェラーリは、2021年F1マシン『SF21』のリア周りに大幅な改良を施しており、新設計されたF1エンジンとともにかつての競争力を取り戻すことを目指している。2020年のフェラーリは、パワーユニットのパフォーマンス不足とドラッグの多いSF1000の空力特性によってストレートでのアドバンテージを失った。そのため、フェラーリはシーズンを通してSF1000を実験車両として2021年シーズンのための開発に取り組んできた。
特にフェラーリF1のエンジニアは、フロアとディフューザーで約10%のダウンフォース削減を目指したマシンのリア部分のレギュレーション変更への対応に多くの時間を費やしてきた。フロントノーズなどの形状も変わっているが、それはあくまで自由な開発が許可されている空力の表面的な変化だ。ピレリのF1責任者を務めるマリオ・イゾラは、F1プレシーズンテストで収取したデータから、ほとんどのチームがすでにその10%の損失を半分以上回復していると述べており、そこにはフェラーリF1も含まれている。フェラーリは、2020年にすでに2021年を視野に入れたフロアコンセプトを試していた。レギュレーションに沿って後輪にむけて約100mm短縮されたSF21の新しいフロアでは、抵抗を減らすために中央部とタイヤ前部に気流を制御するデビエーターが搭載されている。同様のフィンが後輪の隣の最も内側の領域にも搭載されており、ディフューザー上でよりクリーンな空気の流れを生成するのに役立つ(黄色で強調)。バーレーンでのテスト中に撮影された写真を分析すると、2日目と3日目には小さなブリッジ要素が後輪の前にあることが確認されている。フロアの垂直セクションの間に隠されているこのブリジは、ホイールの動きによって引き起こされる乱流を後輪の下部に向けるのではなく、フロアに気流を付着させ続けることが意図されている。フェラーリ SF21は、ギアボックスを包むボディワークにも多くの作業が行われている。フェラーリは、2つの開発トークンを使用して、よりタイトなボディワークと細いリアを可能にする新しいギアボックスをホモロゲーションした。また、ギアボックスは昨年SF1000で指摘されたねじれの問題の軽減も目指している。SF21では、ディファレンシャルが約30mm上がっている。マシンのその領域で撮影された写真からフェラーリF1が後方からの空気の抽出を改善するためのチャネルを作成しようとした方法を見ることがでる。(青いハイライトを参照)。その領域には、サスペンション間の三角形に非常によく隠された小さなフローダイバータもあり、空気の流れをディフューザーの上部に向けるのに役立つ(矢印)。フェラーリのシャシー責任者を務めるエンリコ・カーディルが述べたように、SF21の主な作業は、メカニカル面および空力面で完全にリアで行われた。リアサスペンションは、メルセデス、アストンマーティン、レッドブルのようにクラッシュ構造ではなく、リアアームがギアボックスに固定されたままとなっている。これは使用するトークンの最大数が2であり、ギアボックスにそれらを使用することによって、サスペンションの内部要素を同時に確認することができなかったためだ。サスペンションアームはバーレーンでの第1戦でホモロゲートされ、改訂することはできなくなる。同じことが、パワーユニットコンプレッサーの後のラジエーターとインタークーラーにも当てはまる。熱処理の観点から、フェラーリは依然として高い冷却抵抗を持っており、特にメルセデスやレッドブルと比較して、エンジンカバーのベントが非常に目立つ。真新しいパワーユニット065/6が信頼性の問題のために“呼吸”する必要があるという明確な兆候だ。テスト時のSF21のリアビューでは、大きなリアベント、ギアボックスに固定されたサスペンションの下側の三角形、そしてとりわけ、階段状のフロアから50mm未満の内部フィンを備えた新しいディフューザーがはっきりと確認できる。