FIA会長のジャン・トッドは「F1を去るのはフェラーリの自由だ」と語り、フェラーリが有するF1レギュレーションへの拒否権を廃止する考えを示している。1950年にF1世界選手権が始まってから唯一の参戦を続け、最も多くの成功を収めているチームであるフェラーリは、F1で特権的なステータスと巨大な権力を持っている。フェラーリには長期参戦のプレミアムボーナスが与えられており、この10年はタイトルから遠ざかっているが、毎年の分配金は全チームのなかで最も多額となっている。
それだけでなく、特定の条件下ではあるが、F1レギュレーション変更への拒否権を持っている。FIAは、2005年にF1のライバルシリーズ立ち上げの動きがあった際にフェラーリと協定を結び、正式にレギュレーション変更に関する拒否権を与えおり、実際、2015年にフェラーリがカスタマーエンジンのコストキャップ導入計画に反対した際に発動された。だが、フェラーリが拒否権を有していることは大きな物議を醸している。F1は、2021年以降のスポーツの方向性について重要な決断を迫らなければならない時期に来ており、今年の後半にはFIAとF1が新しいエンジンレギュレーションと商業協定を発行する予定だ。これまでフェラーリはリバティメディアとFIAが示すF1の将来的ビジョンに強く反発しており、F1撤退も辞さないという強硬な姿勢を示している。1993年から2007年までフェラーリF1チームの監督を務め、2009年にFIA会長に転身したジャン・トッドは、フェラーリにF1レギュレーションへの拒否権が与えられることになった背景を説明した。「エンツォ・フェラーリがマラネロにいた頃、他チームがフォードを使っている中で、彼だけがエンジンとシャシーを供給していた。そのため、当時おモータースポーツのシリコンバレー(イギリス)から離れたところにいる彼らには保護が必要だった。これが拒否権誕生の物語だ」 しかし、現在、ジャン・トッドは、フェラーリの拒否権の廃止を望んでおり、F1チーム、FOM、FIAとの間で2013年にコンコルド協定に含まれるべきではなかったと考えている。 「個人的に、今の私はそれに賛成ではない。そう思うようになったのは時代が変わったから」とジャン・トッドは述べた。「何度も述べてきたが、それが再び認められた際に私は大変驚いた。2012年頃に2013年の話をした際、私は個人的にフェラーリの拒否権に反対した。だが、反対したのは私だけだった。たった一人だ」「パリで開催された会議でのことだった。商業権オーナーと全チームが集まり、コンコルド協定について話し合った。フェラーリが拒否権を得ることで皆が足並みをそろえていた。私だけが“フェラーリの拒否権に反対だ”などと発言するのはふさわしくない状況だった。言い回しは修正しただね」フェラーリのF1撤退発言について、ジャン・トッドっは「正直、それは彼らの選択だ。自由にすればいい」と付け加えた。「もちろん、私は彼らがいなくならないことを望んでいる。だが、いつそうなってもおかしくはない」 「我々は、ビッグチームが去り、また戻ってくるのを見てきた。繰り返すが、彼らの選択だよ」 ジャン・トッドは、フェラーリがF1のコスト削減を目指すFIAの計画に合意してくれるはずだと信じている。 「彼らは利口なビジネスマンであり、合理的な人々だ。ある意味、我々がコスト削減を望むのはそのためでもある。フェラーリのような企業にとってレースは赤字であってはならない。収益が出ていた方がいいし、少なくともバランスが取れてなければならない、。ビジネスとして黒字であるべきなんだ」 「あまりにも支出の多かった過去と比べて、その方がはるかに健全だ。現在、私の知る限りでは6から7チームがF1で苦しんでいる。モータースポーツの頂点たる場所で、全体の60から70%が生き残りに苦戦しているというのはとても受け入れがたい」
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