2026年F1レギュレーションの施行により、ホイールの標準化が終了し、各チームは再び独自設計へと舵を切った。2022年から昨季まで全チームに供給されていた18インチの標準ホイールは姿を消し、今季からは設計の自由が認められている。この変更は一見すると小さな規則改定に見えるが、実際にはタイヤの熱管理、さらにはパフォーマンス全体に直結する重要な要素だ。エンジン圧縮比を巡る議論が注目を集める一方で、パドックではすでに“ホイール戦争”が静かに始まっている。
標準化終了で再び設計自由化へ2022年に導入されたホイールの標準化は、空力効率の向上を目的としていた。ホイール形状を統一することで乱流を抑え、より接近戦を生み出すことが狙いだった。しかし2026年から、ホイールはOSC(オープンソースコンポーネント)に分類され、各チームは再び独自に設計できるようになった。自社製造を選ぶチームもあれば、外部メーカーに独自設計を持ち込むケースもある。特に注目されているのが、ブレーキダクト周辺と組み合わせたタイヤの熱管理だ。これは性能面で大きなリターンを生む可能性があり、技術責任者たちも非公式の場でその重要性を認めている。マリオ・イゾラが警告「過去のデータは通用しない」バーレーンでの第2週テスト開始を前に、ピレリのモータースポーツ責任者マリオ・イゾラは、ホイール自由化の影響について言及した。「ホイールは標準化されていない。我々は過去の経験から、ホイールがタイヤへ熱を伝える、あるいは伝えないという点で非常に重要な要素であることを知っている」とイゾラは語った。「多くのチームは、スタート時の空気圧と走行中の空気圧の差(デルタ)が約2psi(約0.14bar)になると予想していた。これは過去のデータに基づくものだ。しかし、その数字はもはや当てはまらない。」ピレリは今週のテスト結果を踏まえ、新たな予測値を公表する予定だという。「スタート時の空気圧は維持するが、デルタはより小さくなると分かっている。現時点では約1psiと見ているが、さらに小さくなる可能性もある。」冷やしすぎてもダメ 存在する“下限”イゾラは、各チームがすでに積極的に熱移動の制御に取り組んでいると明かす。「チームはホイールと熱伝達に取り組み、タイヤ内部の空気温度を定義しようとしている。それは明らかにパフォーマンスにとって極めて重要だ。」一方で、冷却には限界もある。「ある一定点を下回ると、十分な温度が得られずパフォーマンスが失われる。下限は存在する。」エネルギー負荷が高く、気温も高いサクヒールのようなコースでは、この領域が徹底的に活用されると予想している。「このようなサーキットでは、チームはタイヤ内部の最適な空気温度を定義するため、ホイールで多くの工夫をするだろう。」過去には“創造的すぎる”事例もイゾラは最後に、過去の自由設計時代を振り返る。「何年も前、いくつかのチームは非常に創造的なアイデアを持っていた。しかし我々はタイヤをホイールに装着できなかった。」そのため2026年に向けては、FIA文書に明確なガイドラインが定められている。「我々がタイヤを装着できることを保証するためにガイドラインを設定した。そこから先はチーム次第だ。」「特定の結果を得るためにホイールを改良したいのであれば、それは可能だ。」ホイールは長らく過小評価されてきた部品だった。しかし2026年F1では、その小さな円盤が新たな技術戦争の最前線となる可能性が高い。タイヤ温度という見えない領域を制したチームが、今季の主導権を握るかもしれない。