2026年F1の技術レギュレーション刷新という大きな流れの中では、パワーユニットや空力思想の変化が注目されがちだが、一見すると細部に思える要素にも重要な変化が含まれている。そのひとつがホイールカバーだ。ホイールカバーは近年、ファンの間で評価が分かれる存在となってきた。視覚的なインパクトを評価する声がある一方で、従来のホイールデザインに戻ることを望む意見も少なくない。
さらに2026年からは、ホイール自体が完全な標準部品ではなくなり、オープンソース化される予定で、2025年シーズン後のアブダビテストでは、すでにいくつかのチームが異なる解釈を試し始めている。ホイールカバーは2022年に再導入された際、全チーム共通の標準部品として位置付けられていた。その目的は、タイヤ周辺で発生する乱流を抑え、後続車が追従しやすい空気の流れを作ることにあった。これは、ブレーキ周辺の構造を利用して、ホイール内部から外側へ空気を排出するような空力的トリックを禁止した、FIA(国際自動車連盟)の方針とも一致していた。この時代のホイールカバーは、いわば空力的な「栓」として機能する存在であり、形状も役割も厳しく定義されたものだった。しかし2026年に向けて、その位置付けは大きく変わりつつある。2025年10月以前のレギュレーション草案では、ホイールカバーは非常に厳密に規定されていた。各ホイールには、内径310mmと明確に定められた穴を持つディスクを装着しなければならず、事実上、中央に決まった大きさの開口部を持つ固定形状の部品として扱われていた。このため、FIAやF1が公開してきたレンダリングでも、ほぼ同一形状のディスクが描かれていた。ところが、2025年末にかけて更新された最新の草案では、この記述が大きく変更された。もはや「内径が定められたディスク」という表現は使われず、「環状(アニュラー)ディスク」とのみ記されている。つまり、内部開口部の大きさについて、FIAが具体的な数値を指定しなくなったのだ。一見すると小さな文言変更だが、設計の自由度という観点では決定的な違いを生む。安全面や特定の体積を侵害しないといった制約は依然として存在するものの、チームはこれまでよりも柔軟に、ホイール周辺の空力処理を考えることが可能になる。この新しい方向性を示唆する最初の実例は、2026年F1参戦を控えるAudiが、先週バルセロナで行ったフィルミングデーで確認された。公開されたマシンのホイールカバーは環状構造を維持しつつも、内側が閉じられた形状となっており、従来のFIAレンダリングに見られた「完全に開いた中央部」とは異なるアプローチが採られている。この変更がどこまで空力的な意味を持つのか、また他チームがどのような解釈を打ち出してくるのかは、今後のテストや開幕戦を通じて徐々に明らかになっていくだろう。少なくとも、2026年のホイールカバーはもはや単なる共通部品ではなく、各チームの設計思想と創意工夫が反映される、新たな競争領域のひとつになりつつある。
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