伝説的カーデザイナー、ゴードン・マレーが2024年初頭に食道がんと診断され、同年7月にロボット支援による内視鏡手術を受けて成功していたことが明らかになった。F1史上最も象徴的なマシンをいくつも手がけたマレーは、英『Telegraph Sport』のインタビューで次のように語った。
「この15年間、毎年内視鏡検査と生検を受けてきた。その中の一回で見つかったんだ。食道がんは、症状が出るのが遅いから発見が難しい。だからこそ生存率も非常に低いんだ」長年にわたり逆流性食道炎に悩まされていたマレーは、定期的な検査を受けていたことで早期発見につながったという。「抗がん剤治療の前に、腫瘍内科医が僕と妻に副作用の説明をしてくれたんだけど、その通り全部出たよ」とマレーは苦笑しながら振り返る。報道によれば、79歳のマレーは2024年7月に「ダ・ヴィンチXI」手術ロボットを用いた腹腔鏡手術を受け、英サリー州の医師ショーン・プレストン教授が執刀した。「このロボットシステムでは、肉眼以上に拡大された3D映像を見ながら腹部や胸部内を操作できる。まるで体内に入り込んで手術しているような感覚だ」とプレストン教授は説明する。マレーは、F1マシンの開発になぞらえてこう語る。「医者は部屋の向こう側で、まるでプレイステーションみたいな機械を操作して、僕はベッドに寝ていてロボットが全部やってくれる。まるでレーシングカーの試作みたいなものだよ。アイデアを出して、実際に走らせる前に開発する。その過程が一番楽しい」2025年、ゴードン・マレーは設計者としてのキャリア60周年を迎える。これを記念し、7月10日から開催される英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、自身が手がけた17台のマシンが特別展示される予定だ。そのラインアップには、伝説的な1978年のブラバムBT46B“ファンカー”や、1988年のマクラーレンMP4/4、2024年に発表されたトラック専用のGMA T.50sニキ・ラウダXP1などが含まれる。マレーはこの節目についてこうコメントしている。「60年間もレースカーとロードカーを設計・開発してきたなんて、自分でも信じられない。グッドウッドで何千人ものファンと再会して思い出話ができるのを楽しみにしているよ。その翌月には、Gordon Murray Special Vehiclesのダブル・デビューも控えている。これまでのオーナーにも、これからの顧客にも、クルマとドライビングを称えるこの祝祭に参加してもらいたい」