2009年のF1は開幕4戦を終了した。昨年までチャンピオンシップを争ったフェラーリやマクラーレンが下位に沈み、ブラウンGPやレッドブルといったチームが上位に並ぶなど、F1の勢力図は大きく変化した。ここまでのマシンパフォーマンスは、プレシーズンでの準備があらわれたマシンの素の特性とも言える。ヨーロッパシーズンがスタートし、大部分のF1チームがアップデートを加える前に、各F1マシンの実力を分析してみたい。
リードを維持することができるか?!ブラウンGPテストで見せていた実力は本物だった。ブラウンGPは、開幕戦でワン・ツー・フィニッシュを飾り、4戦中3勝を挙げるなど圧倒的な強さをみせている。BGP001は、奇をてらった部分はないものの、細部まで意識が行き届いたバランスのとれたエアロマシン。高速コーナーでのダウンフォース、しなやかなに路面ショックをいなすサスペンションなど、グリッドでは別次元のマシンバランスをみせている。レギュレーションの改定により、今年はリアの挙動がパフォーマンスに大きく影響しているが、論争となったダブルディフューザーを組み込んでいるBGP001は、その点でも他のマシンから一歩抜け出している。タイヤに優しいのもBGP001の特徴。今年はタイヤマネジメントもレースにおいてより重要な要素となっているが、ジェンソン・バトン、ルーベンス・バリチェロというタイヤに優しいドライバーをそろえている点もアドバンテージに繋がっていると言える。しかし、その反面、一発の速さに欠けており、中国GPでみせたように、そのタイヤへの優しさが仇となる可能性も秘めている。また、多くのチームがヨーロッパラウンドでダブルディフューザーを含めた大幅なアップデートを投入するため、資金の薄いブラウンGPが他チームの追撃を凌げるかも残りのシーズンのポイントとなるだろう。ダブルディフューザー VS ノン・ダブルディフューザー開幕から論争を呼んだダブルディフューザー。しかし、ダブルディフューザーを搭載しないレッドブルが、ブラウンGPに迫るパフォーマンスをみせている。レッドブル RB5は、リアの低重心化に徹底的に焦点をあてたエアロマシン。コーナリングの立ち上がりでは抜群なトラクションを誇る。ただし、一発の速さは兼ね備えているが、その素性によりRB5はタイヤに厳しいマシンともいえる。昨年に例えれば、ブラウンGPがフェラーリで、レッドブルはマクラーレンに近いマシン特性を持っていると言えるだろう。また、レッドブルの好調はタイヤに厳しいマシンをしっかりと抑えつけるセバスチャン・ベッテルのドライビングによるところも大きいといえる。現在、レッドブルはファクトリーでダブルディフューザーの開発を進めており、シーズン後半の伸びが最も期待できるチームといえるだろう。ダブルディフュザー組で安定したパフォーマンスを見せているのがトヨタだ。TF109は、一発の速さ、ロングランともにムラのないパフォーマンスを示している。ただ、その突出した強さがない部分が上位2チームに及ばない部分とも言える。バーレーンでの慎重すぎるタイヤ戦略もチームの特徴を印象付けるものとなった。しかし、トヨタは開幕4戦で積極的に新しい開発を投入しており、大きな開発リソースが後半戦の鍵となるだろう。同じダブルディフューザー組でも、苦戦を強いられているのがウィリアムズだ。金曜日のブラクティスでは優れたパフォーマンスを発揮するFW31だが、予選と決勝では影が薄くなってしまっている。一発の速さ、ロングランでの一貫性が原因と言えるだろう。タイヤのタレが早いのもFW31の弱点だろう。トヨタ、レッドブルと違い、ウィリアムズは開幕前からシーズン中のKERS搭載を見据えてマシンの開発を行っており、シーズン後半にKERSというピースがハマったときがFW31が真の実力を発揮するときかもしれない。苦戦が続くKERS組今年の目玉といえるKERSだが、搭載したチームは開幕4戦で苦戦を強いられている。先に述べたように今年はリアの挙動がパフォーマンスに大きな影響を及ぼしており、ダブルディフューザーなどリアの空力に注力したマシンに比べ、重量配分に意識をとられたKERS組のパフォーマンス不足は顕著だ。特に開幕4戦では、プレシーズンテストからリアウイングやディフューザーに手を入れていたマクラーレンにその苦悩がみられた。マシンの暴れを抑えるため極端に硬くしたサスペンションにより、コーナーでフロントタイヤが浮いてしまう場面が多くみられ、昨年のチャンピオンであるルイス・ハミルトンの豪快なドライビングはすっかり影を潜めている。しかし、中国GPから新型ディフューザーを投入し、パフォーマンスは劇的に向上。Q3に進出するまで競争力を強めている。KERSはしっかりと使いこなせているため、残りのシーズンでいかにマシンを仕上げていくかが、浮上のポイントといえるだろう。フェラーリもエキゾーストがレギュレーションに違反している可能性があるとして開幕前にリアの設計のやり直しを強いられている。少なからず、パフォーマンス面の影響はあるだろう。F60は、昨年と同じく、タイヤに優しいマシンに仕上がっており、一発の速さに欠けている。また開幕4戦では、KERSを含めた信頼性、ピット戦略の緩みでも、いくつかポイントを落としており、改善が必要なのはパフォーマンスだけではない。マクラーレンが早々に手を打ってきたのに対し、ほとんど新開発を投入しなかったチームの姿勢にも不安を感じる。スペインGPでは、ダブルディフュザーを投入したBスペックマシンを投入する予定であり、そのポテンシャルがシーズン後半を占うと言っていいだろう。ルノーは、フェルナンド・アロンソありきの成績と言ってもいいだろう。R29のパフォーマンス不足はあきらかであるが、随所でアロンソのドライビングによって光る部分をみせている。ダブルディフューザーを投入し、KERSを外した中国GPでは、軽い燃料ではあるがフロントローを獲得している。ヨーロッパの序盤2戦ではKERSを搭載しないことを決定しており、シーズン後半に向けてのマシン開発の方向性が決め手になると思われる。KERSを最も支持していたBMWザウバーが、KERSに苦しんでいるのは皮肉な話だ。背の高いロバート・クビサは、バーレーンGPで初めてKERSを搭載したが、印象的なパフォーマンスを見せることはなかった。スペインGPでは軽量化を含めた大幅なアップグレードを投入するが、KERSは搭載しないという。ただ、KERSへは依然として固執しており、KERSとエアロダイナミクスの二頭を追う状態となってしまっている。新しい開発を投入しな...
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