キャデラックF1が、F1マイアミGPの週末にマイアミ・ビーチの高級和牛ステーキハウス「Queen」でチームとして初めて公の場に登場し、フォーミュラ1への第一歩を踏み出した。イベントの開催が報じられると、パドック内外では「リバリー公開か? ドライバー発表か?」といった憶測が飛び交った。しかし、ドライバー発表やマシンの披露などを期待していた人々にとっては、やや肩透かしとなる内容だった。
蓋を開けてみれば、披露されたのはキャデラックの市販車と同じデザインのチームロゴのみで、それ以外に発表は一切なかった。ジャネール・モネイによるライブパフォーマンスや俳優テリー・クルーズのスピーチが会場を盛り上げる中、イベントは華やかに展開されたが、その華やかさに反して「中身のないローンチ」と受け取った者もいたかもしれない。だが、キャデラックは当初からこのイベントが何かを「発表する」場ではないことを明言していた。その真意について、将来チーム代表を務めるグレアム・ロードンは次のように語っている。「この場は、人々に“F1チームとはどう生まれるのか”を体感してもらうための招待だった。我々は単なるローンチイベントを開いたのではない。これは、キャデラックF1という存在を人々の意識に根付かせる第一歩だった」ロードンは、キャデラックF1の立ち上げにおいては、段階的かつ慎重なアプローチを重視しており、あえて即時の注目や派手な演出を避けていると説明する。「我々は人々を圧倒したくはない。ただ静かに、少しずつ自分たちの姿を伝えていきたい。それが我々のスタイルだ。ファンベースが育てば、その周囲に自然とエコシステムも広がっていくと考えている」“このチームは自分のものだ”と思える場所をキャデラックF1が目指すのは、単なる「アメリカのF1チーム」ではない。ファン一人ひとりが「これは自分のチームだ」と感じられる、主体的に関わりたくなるような存在である。「我々は“応援してほしい”とは言わない。“一緒にいてほしい”と伝えたい。人は自らの意志でチームを選び、そこに情熱を注ぎ込む。それがスポーツの本質だ。もし人々がこのチームに居場所を見つけてくれたなら、それが何よりの成果だ」「何かを提供するというより、共有する――それが我々の姿勢だ。それは押しつけでは成り立たない。自分のチームだと感じてもらえた時、初めて“つながり”が生まれる」この「共にあるチーム」という理念は、イベントの運営にも表れていた。多くのF1関連パーティーがセレブや限られた関係者を対象に行われるのに対し、キャデラックF1はメディアセンターにいたほとんどの記者を招待し、モータースポーツ専門メディア、パドック関係者、さらにはミック・シューマッハのような将来のF1候補生まで広く迎え入れた。ロードンは、この開かれた姿勢こそがチームの本質を体現していると語る。「ブランドの核やチームの本質を築くという意味で、我々には大きな自由がある。そして時間の猶予もある。だからこそ、一人ひとりとしっかり向き合いながら、関係性を育てていける」「F1の世界で、新しいチームがゼロから作られていく過程を誰もが目撃できる機会は、そう多くはない。だからこそ、我々はこう呼びかけたい。“関わってみたいなら、ぜひ見に来てほしい”と」