ジェンソン・バトンは、2025年のF1タイトル争いにおける“空気の変化”に気付いている。今季のマックス・フェルスタッペンは、ランド・ノリス、オスカー・ピアストリと激しいタイトル争いを繰り広げているが、夏以降に見せた驚異的な巻き返しによって、評価が一変しつつあるという。フェルスタッペンは8月時点で104ポイント差の“絶望的”といえる状況に置かれていたが、その後の5戦でピアストリを全て上回り、4連覇王者が再び王座に手をかける位置まで戻ってきた。
レッドブルが夏休み明けに投入したフロアとフロントウイングの改良も、大きな後押しとなった。バトン「面白いよね。今や“ほとんど全員”がマックスを応援している」バトンは、フェルスタッペン自身のパフォーマンスだけでなく、“世間の受け止め方”が変わったことを強調する。バトンはイタリア『Autosprint』に対し次のように語った。「フェルスタッペンは本当に卓越している。これまでで“ベストのマックス”だと思う。だけど面白いのは、最近になって“ほとんど全員がマックスを支持している”ように見えることだ。人々の記憶は短いというか、以前は批判が多かったのにね」2024年のメキシコGPでノリスとの攻防において限界を越えたとされたように、かつてはフェルスタッペンのアグレッシブさに疑問が呈される場面も少なくなかった。デイモン・ヒルら解説陣も、その姿勢を繰り返し問題視してきた。しかし今年は状況が異なる。バトンは続けて述べる。「賭けをするタイプじゃないけど、今のマックスは“失うものが何もない”状態だ。最速のマシンを持っているわけじゃない。だけど4度王座を獲得しているし、このタイトル争いの中でもっともリラックスしているように見える」“王者が挑戦者”になったことで評価が一変?フェルスタッペンが“追われる立場”ではなく“追う側”になったことも、世論が彼を支持する理由の一つと考えられる。2021年にルイス・ハミルトンと戦った時以来、フェルスタッペンが「格下」とみなされる状況は珍しい。加えて、限界を押し広げる走りやレース外での挑戦も、人気上昇の一因となっている。フェルスタッペンは9月にニュルブルクリンクでGT3レースにデビューし、いきなり勝利を挙げて周囲を驚かせた。これまでフェルスタッペンを批判してきたジョニー・ハーバートでさえ、2025年メキシコGPでハミルトンを外側に押し出す形で仕掛けた“ギリギリのオーバーテイク”を称賛している。なぜ世論は変わったのかかつては“強すぎる王者”として敬遠されがちだったフェルスタッペンだが、2025年は“完璧ではないマシン”とともに戦い、挑戦者として勝利をもぎ取る姿が、ファンの共感を誘っている。王者でありながら必死に追いかける姿勢、そして危険すれすれの攻めを一切やめない勝負勘。そこに“人間味”を見出し、支持に転じたファンが増えた――バトンはそう読み取っている。そして残り4戦。フェルスタッペンが逆転で5年連続王座を獲得すれば、F1史上最大の大逆転劇として語り継がれることは間違いない。
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