2009年のF1ワールドチャンピオン、ジェンソン・バトンが、来週末に開催される世界耐久選手権(WEC)最終戦バーレーン大会をもって、現役を引退することを発表した。45歳のバトンはここ数年、チーム・ジョタからWECに参戦してきたが、「これが最後のレースになる」とBBCラジオ・サマセットに語った。
「バーレーンはいつも好きなサーキットだし、最後のレースを思いきり楽しみたい。これでプロフェッショナルとしてのレースキャリアは終わりだ」300戦超のF1キャリア、ハミルトンとの名コンビもバトンはF1で300戦以上に出場し、通算15勝を挙げた。2009年にブラウンGPで初タイトルを獲得し、その後はマクラーレンへ移籍してルイス・ハミルトンとチームメイトとして3シーズンを戦った。その間、チーム内ポイントではハミルトンを上回り、卓越したレースマネジメント能力を発揮。マクラーレンには2016年末まで在籍したが、ホンダパワー復帰後の低迷期を経て一度F1から引退していた。「家族の時間を優先する時が来た」今回の決断について、バトンは次のように語っている。「ジョタでのWEC参戦は本当に楽しかったけれど、今は人生があまりにも忙しすぎる。チームにも自分にも不公平だと思うんだ。2026年に向けて十分な時間を割けるとは思えない」「子どもたちは4歳と6歳。1週間家を離れるだけで、あっという間にいろんな瞬間を逃してしまう。ここ数年は仕方ないと割り切っていたけど、もうこれ以上は同じような生活を続けたくない」クラシックカーでのレース継続に意欲も一方で、完全にハンドルを置くわけではないようだ。現在は英スカイスポーツF1で解説者を務めるバトンだが、自身の所有するクラシックカーでのレース活動には意欲を示している。「自分のクラシックカーを走らせるのが楽しいんだ。WECやF1マシンとは全く違って、メカニカルなつながりを感じられる。ヒール・アンド・トゥや正確なシフト操作、エアロがない世界……そういう“純粋な機械の操縦”が大好きなんだ」バトンが象徴する“職人型ドライバー”の美学バトンのキャリアは、スピードだけでなく「繊細な技術」と「知的なレース構築力」に支えられたものだった。トリッキーなコンディション下での巧みな判断力や、マシンの感触を生かすセットアップ能力は群を抜いていた。彼がF1で最後に残した功績は、単にチャンピオンの肩書きだけでなく、グラウンドエフェクト全盛の現代においても忘れられない「人間の感覚で戦うドライバー像」を体現したことにある。バーレーンでの最終レースは、そうした“クラシック・レーサー”としての矜持を締めくくる舞台となりそうだ。
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